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牡 蠣 養 殖 場

  • ホバートからビチェノBichenoへA3号線道路を車で走る。途中の景色は日本人になじむ穏やかな景観。両側に広がる樹木はユーカリ、成長が早く、床材などに使われる。高さ101mものユーカリがギネスブックとのことだが、90mくらいはたくさんあるいわれている。
  • world09_04_sum.pngホバート郊外景観
  • ゴルフ場のあるあたりの、砂浜がきれいなところで一度休憩して、また、走って行くと、大きな車が道端にあり、そこからまだ若い大男が手を振り、こちらについて来いという仕草をする。ついて行く道は舗装されていなく、デコボコ山道で、両側は草原と樹木が続き、かなり走って着いたところが丘の上。ここで降りると養殖場が一望できる。入江となっている海側から入り込むところは、養殖場の手前で急に狭くなっている。陸地側からは上流70kmに発する川から水が流れ込んでいる。海と川に挟まれた静かで穏やかな一角であり、今まで世界中で見た牡蠣養殖場では、一番理想的な環境だと感じる。
  • world09_05_sum.pngリトルスワンボート
  • ここは、リトル・スワンポート LITTLE SWANPORTである。GREAT OYSTER BAYに面しているが、この名前にもなるほどと思う。ここは棚方式で牡蠣を養殖している。ここの始まりは元National Aquaculture Councilのタスマニア代表を務めた父で、今は息子のハイデンHayden Dyke氏が継いでいる。社名はOYSTER BAY OYSTERS PTY Ltd。従業員は三人。広さは27ha、年間12万ダース・144万個生産。少ないと感じる。タスマニア全体の約3.5%になる。ここでも当初は、ネイティブ牡蠣を採っていたが、だんだん採れなくなり、病気もあって、マガキに変えた。1983年創業であるから、まだ26年しか経過していない海である。日本での養殖は、天文年間(1532年~1555年)に広島湾で行われ始めたのであるから、既に500年近い年月を経ているので、全く比較にならない若さである。
  • 早速、船を出してくれ、棚のところに行く。この海域には二つの養殖会社あり。海の真ん中にある通路で区切られている。海水の状況は、三か所に検査機を配置し、塩分濃度、温度、酸素の三条件を五分ごとに、事務所のパソコンにワイヤレス連絡している。これは州政府が定めた1995年の基準によるもの。さて、養殖の成長順に船を動かしてくれる。タスマニアの天候は猫の目で、晴れていたかと思うと土砂降り雨が降り、雨が降ったかと思うと晴れる。だから、今晴れていても雨が降る可能性があるので、傘をもって船に乗る。
  • 牡蠣養殖の育て方は、
  • ① 6mmサイズの稚貝を二カ月ごとに25万個仕入れる。これを10トレイに入れる。一トレイ25000個。海水に入れておき、10mmになると違う場所へ移動。小さいものは又海に入れる。稚貝の死亡率は10%程度と少ない。一般的には30%程度あるという。
  • ② 次にかごに入れる。4か月で4cmになるが、大きさがバラつくこともあり、成長具合で選別し、海水に長く入れるものと、そうでないものとに分ける。今年は雨が多かったので、成長具合のバラつきが大きかった。
  • ③ 次のかごは8か月入れる。一かごに90個から100個。6から7cmになる。かごで殻の形作りする。ここの牡蠣は形がよいという評判である。
  • ④ 次に出荷できる状態の牡蠣棚に行く。出荷前の調整しているところ。ハイデン氏が海に入って牡蠣剥いてくれ、それを四個食べたが、身が締まって美味い。絶品だ。
  • ⑤ さらにビックな牡蠣棚に向かう。大きい。日本と同じくらい。ここでも二個食べる。美味い。最高だ。
  • ⑥ 結局、出荷までに14か月から26カ月程度要する。
  • ⑦ 出荷するに当たっては、船で牡蠣を運んできて、作業場に船を車で引っ張り上陸させ、大きさを整理し大きな袋に入れ、その上に名札を張る。以前は麻袋であったが、今は白いビニール袋使用している。
  • ⑧ なお、三倍体も扱っているが、夏場用として買うのみ。
  • さて、ハイデン氏に牡蠣養殖の理念について伺ったところ、「量より質であり、持続的安定成長」であるとすぐに答える。すべてはクォリティにつきるというのだ。さすがにタスマニアだ。感心するし、タスマニア州第一次産業省水産局が述べた「タスマニア牡蠣は品質がよく、高級品で、少量のよい牡蠣をつくることがモットー」と一致している。州政府と現場の実態が同一である。さすがであると思う。
  • world09_06_sum.pngハイデン氏が牡蠣を剥く
  • さらに、ハイデン氏は強調する。この理念は父の進めてきた経営が存在している。それは、最初は少ない小さい規模でスタートし、環境保護を最も重視し、大事に徐々に大きくしてきたこと、それを自分も踏襲しているのだという。ここでも環境重視姿勢が貫かれている。
  • なお、タスマニアの牡蠣の大きさ基準は次のように分かれている。
  • ① バフェットBUFFETビュッフェの大きさ、これは6から7.5cm。
  • ② 中はスタンダード7.5cmから8cm。
  • ③ 大はラージで8cmから10cm。
  • ④ 特大はジャンボ10cm以上。