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世界牡蠣研究家
山本紀久雄

  • アメリカ・マサチューセッツ州ボストンで開催されるボストン・シーフード・ショー International Boston Seafood Show 2013に参加した。
  • ボストンへはカリフォルニア州ロサンゼルス空港からAAエアーで向かったが、ボストンの話に入る前に、犬について触れたい。機種757の狭い座席だが、満席である。5時間半かかる大陸横断飛行で、時差は3時間あるが、その機内で犬の頭を撫ぜることになった。その事と次第はまず、ドイツからお話したい。
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  • 自宅での毎朝夕、リード(紐)を持ってビーグル犬の散歩をさせるが、この犬、あちこち勝手に動き回り、飼い主の思うようには動かない。犬に引かれて善光寺参りである。犬の散歩をしている同類の方々、殆どが同様で、日本の犬は躾と礼儀が欠けている。
  • ところが、欧米の犬はとてもよく躾されている。この写真は昨年11月に乗ったドイツのICE特急列車内で見た実際の犬の姿である。若い女性が、車内でパソコンを操作している足元に、犬がリードなしで、静かに吠えもせず座って、こちらを見ている。自宅のビーグル犬とは大違いのお利口さんで、感動ものなので、許可を得て写真を撮らせて頂いたが、日本ではリードによる手綱さばきが必要で重要条件である。
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  • これと同じ体験をロサンゼルスからボストンに向かうエアーの中で体験した。三人座席が並ぶ窓側と中央席に若い中国系男女が座り、当方は通路側である。ロサンゼルス空港を出発して一時間程度経ったとき、突然、窓側の男性膝の間から白いモノが出てきて、それが動く。アレっと思い見つめると、ブルッと頭を振ってあくびする。犬だ、とびっくりする。吠えもせず、鳴きもせず、水も飲まず、ずっと大人しく過ごしている。これにも感動した。世界標準の犬の躾はこうなのかと、犬の頭を撫ぜた次第。
  • ボストン空港に着くと、そこは一面銀世界である。大雪が降って、一時、空港が閉鎖されるほどの騒ぎであったらしい。雪がやんだ夕方に着陸できたので無事ホテルに辿りつけたが、ボストンの冬は寒い。ボストンの気候は、基本的には、湿潤大陸性気候と温暖湿潤気候の中間といってよく、ニューイングランド海沿い南部で典型的に見られる気候である。夏は通常高温・多湿であるのに対し、冬は寒く、風が強く、雪が多い。
  • ボストンはマサチューセッツ州の州都であり、サフォーク郡の郡庁所在地でもあり、同州最大の都市である。また、アメリカで最も歴史の古い街の一つである。アメリカ北東部の6州(コネチカット州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、メイン州、ロードアイランド州)をニューイングランド(New England)と称するが、この中で最大の都市であり、同地域の経済的・文化的中心地である。
  • ボストン市の人口は、2007年推定で60万8352人であり、アメリカ国内で第21位。なお、ボストンは大ボストン都市圏という巨大な都市圏の中核でもあって、450万人が住み、アメリカ第10位の都市圏である。
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  • 1630年、イギリスからのピューリタン(清教徒)の入植者が、ショーマット半島に上陸し、18世紀後半、ボストンは、ボストン虐殺事件、ボストン茶会事件(上写真の場所で発生)、などアメリカ独立戦争におけるいくつかの重要な事件の舞台となっている。また、大リーグのボストン・レッドソックスBoston Red Soxの本拠地でもある。さらに、対岸のケンブリッジ市にはハーバード大学Harvard University、マサチューセッツ工科大学 Massachusetts Institute of Technologyがある。
  • B_1_04.png(レッドソックス球場)
  • B_1_05.png(ハーハード大学正門)
  • さて、2013年3月10日(日)~12日(火)に開催されたボストン・シーフード・ショー International Boston Seafood Show 2013初日の10日に会場へ向かった。事前に申し込みし、参加料も支払ってあったので、宿泊したホテルのロビーで参加証を受け取り、首から下げて、港地区に位置するコンベンションセンターBoston Convention & Exhibition Centerへ専用のバスで向かった。
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  • 「約15分でついた会場は、広い会場(185,780sq.ft)であり、水産物専門では北米最大規模で、魚介類(生鮮・冷凍・活魚介・ブランド品・自家商標品)、加工機械、冷凍機器、解凍機器、品質保持製品、輸送機器、パッケージ機械、調味料各種等が出展され、46カ国から1017社出展、バイヤー・参加者は19,000名社以上で、主催はシーフード・エクスポジションズである。」
  • 日本の農林水産省も「21世紀新農政2008」の中で、2013年までに日本の農林水産物・食品の輸出額を1兆円規模にまで拡大する目標を掲げ、 この一環として2009年から日本パビリオンを出展しており、国内の生産者にとっては、海外への販路開拓の足掛かりにしようと努力している。 また、北海道も、道産水産品の高い品質や安全性を世界にアピールすることにより北海道ブランドのイメージ向上と定着を図ることを目的に北海道ブースを設けていた。
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  • 会場を一度回り、もう一度、今度は視点を絞って歩いてみた。その視点とは「日本の生鮮食品の位置づけ」である。
  • 結果的に、日本の生鮮食品については、他国の出展ブースをみて理解できた。というのも他国が日本モノと惑わすようにネーミングを使っている事例があり、それから判断すると日本製品は高い評価を得ていると理解できるからである。
  • 以下の写真、ひとつは「芸者」をロゴ化しブランドとして使用している外国企業の事例。もうひとつは「日本の職人が着る調理衣の白衣・上着を着用し、バックの表示板には、漢字名の商品ロゴを使用」している。次の下の右左写真、分かりにくく恐縮ですが、これを拡大すると「丸一」「天下一」「だしのもと」とかを使用している中国系企業である。
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  • この実態について農林水産省の担当係長に問い詰めたところ、困った顔をしていたままで、回答はなかったが、国としてこのように商標表示については対策を講じていかないといけないと感じる。いろいろ難しい背景はあろうと思うが、信頼のある日本ブランドを他国が勝手に利用するのは大問題であり、少なくとも会場で注意・クレームをとるなどの対策は必要であると感じた。
  • もう一つは、地元ボストンに住む日本人女性、農林水産省ブースの手伝いに来ている方からいろいろ伺ったが、彼女の結論は「日本人が魚を扱うところからしか買わない。他の店は危ない」というもの。確かにこれはいえるだろう。
  • ロサンゼルスでは、魚介類卸企業のマネージャーとお会いしたが、まだ41歳と若いが、経験豊富で業務知識がありテキパキと答え行動する優秀な人材とお見受けした彼が語るには、アメリカのFDA食品医薬品局( Food and Drug Administration)が、韓国産牡蠣を輸入禁止措置にしたという。
  • 調べてみると、複数の韓国メディアも報じていて、2012年6月に韓国産のカキ、貝、ムール貝、ホタテなどの貝類が、人糞などに汚染され食中毒を引き起こす恐れがあるとして、流通業者に販売禁止を通告している。すでに流通している生ものや冷凍の韓国産貝類も、回収する方針。韓国産貝類の養殖場に人糞など人間の排泄物が流れ込むなど不適切な衛生管理にあり、ノロウイルスに汚染している可能性が高いという。
  • また、FDAは訪韓し、米輸出向け牡蠣を養殖する慶尙南道(キョンサンナムド)の統營(トンヨン)・巨濟(コジェ)地域を調査し、検査の結果、ノロウイルスが検出されたと発表している。この韓国産牡蠣の件、前述したロサンゼルス魚介類卸企業のマネージャーからも、韓国はむき身の牡蠣を、使い古した牡蠣殻に入れ、それを冷凍して米国に出荷したという不衛生な管理が韓国の特徴であるとお聞きしたので、ボストン在住女性が心配するのもさぞかしと頷いたわけである。
  • ところで、ロサンゼルスの魚介類卸企業の経営方針は「よいものを探して提供すること。自分の子供・孫に伝えていけるものを探していく」という素晴らしいもので、日本人は素晴らしいと改めて外国で感じ入った次第。しかし、ボストン・シーフード・ショーはすごかった。とても楽しかった。それは試食のすごさである。どこのブースに行っても試食がある。日本館も職人さんを日本から連れてきて、目の前で寿司を握って、勿論、何個食べても文句は言わないし、とても新鮮で美味い。
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  • 喜んで寿司ばかり食べていると、肝心要の牡蠣が試食できなくなる。牡蠣のブースは会場全体に散在していて、それを配置図から数えてみると67カ所出展している。さすがに規模が大きいと改めて感じつつ、いくつか試食した中がなかなか美味い。特にクマモトオイスターに代表される小粒な牡蠣が絶妙な味わいを伝えてくれる。小粒だからなのか、舌に甘い自然な香りを残してくれる。
  • この他にも、アメリカは生マグロとサーモンがよいという評判。確かにうまい。その他に世界中のビールやワイン・リキュールもあって、全て無料。これらの試食で昼食の必要はないということになる。なお、来年のショーは 3月16日から18日に開催され、名称は新たにSeafood Expo North America に変更される。
  • 会場で関係者から教えてもらったのであるが、欧州シーフード・エキスポがベルギーのブリュッセルで4月23日から25日に開催されるとのこと。会場はブリュッセル市内のエキスポ・センターで、こちらの方がボストンより大規模とのことなので、来年には参加したいと思っている。

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