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中 国 ・ 上 海 ・ 台 湾

  • sign_c_1_1.png浙江省・寧波近くの強蛟鎮(チャンチンチャン)の作業船
  • 今や中国が世界の注目の的、中国がマスコミに登場しない日はない。また、その中国でも上海は素晴らしい経済成長と、万博開催都市という背景もあって、世界から常に関心を持たれている。従って、上海の状況資料は各方面から語り伝えられ、提供されているが、結果として、多すぎる情報は、返って上海の実態をわからなくさせているのも事実だろう。
  • 上海にはここ数年よく行く。牡蠣調査でも、そのほかの用事でも訪問し、その一環で何人かの上海女性にインタビューを行った。これらの女性を紹介することで、上海の印象を述べてみたい。
  • まずは、日本に対する感情である。よく中国人は反日感情が高いといわれる。2005年4月には上海の日本領事館に暴徒が押し寄せ、ガラス等を割られる被害が起きた。その上海であるから、一般の人々も反日感情が高いのではないかと、一応考えつつ何人かとお会いしてみたのが2008年3月の事。最初は20歳の女性。彼女が勤めている企業に伺った。高校卒業後、2010年の万博専門の専門学校を卒業し、今の仕事に就職。職務は秘書と言っていたが、従業員は本人だけの広告デザインベンチャービジネス企業で、オフィスは地下鉄三号線「宣山路駅」すぐの、元ビジネスホテルを改装し、小さな個人企業が多く入っているビルの一室。現在独身。今の希望は明確で、彼を見つけ恋愛し、彼ができたらしっかり化粧し、結婚し、家事をしっかりして、金持ちになって世界旅行したい。
  • お金持ちになるために、金持ちの彼を見つけるか、この仕事で頑張ってボーナス一杯貰ってお金貯めること、どちらかで金持ちになれるチャンスがあると思っている。趣味は音楽、インターネット、友人と食事すること。ジーパン姿の自然な感じの穏やかな女性。事務所に入ると、すぐに紙コップに熱いお茶を入れて待っていてくれ、帰りに向こうから握手してくる。全く反日でない。
  • 次は、51歳で、住宅1700戸を管理しているグループリーダー。部下は七人いる。三年ごとに選挙で選ばれるが、既に7年勤務しているというベテラン女性。いろいろ伺って帰ろうとした時点での発言に、日本人とは生まれてはじめて話すので、最初は嫌だったが、話が終わった時点では、楽しい会話だったのでホッとしたと述べたことから推測すると、反日感情が若干あったのかと思う。
  • 彼女の話で印象に残ったのは、中国人の多くは街中で大声上げて喧嘩しているが、自分はそのようなことはしたことがなく、今までの人生で怒ったことがなく、夫婦喧嘩もしなく、仕事でも話し合いで解決し、自己感情を調整できることが、今の仕事に就いている理由だと、自己分析し語ってくれたことである。というのも、今の仕事は毎日トラブルが持ち込まれる。泥棒が出た。家の中で喧嘩した。生活が出来ない。子どもの就職先がないなどキリなく言ってくる。それをさばく仕事で、管理している1700家族の人たち全員を記憶している。自分の仕事は回りと年上を幸せにすることだと思っているとの発言にも驚いたが、家の中は綺麗に片付いている。台所も綺麗。床は木でよく掃除されて光っている。
  • 一般的に中国人は口が激しく、家の中は汚いと思っている人が多いが、それとはまったく異なる実態であった。
  • 京劇指導者にも会った。54歳女性。アパートの二階に住んでいる。車が着くと階段の上から顔を出す。眼鏡をかけ、髪を後ろに束ねた化粧していない顔。京劇とは古典劇で、清代に北京で発生したもの。京は北京の意味で、僅かなお礼で指導している。家族は夫と息子24歳の3人。家の中は綺麗に片付いていて、床も光っていて清潔。文化大革命当時は医者であったが、追放され工場の守衛となった。文化大革命とは1965年から約10年間、毛沢東主導下で展開された政治・権力闘争。プロレタリア文化大革命、文革とも呼ばれる。50年代の大躍進政策をめぐる路線の対立がその胎動といわれる。「絶対に階級と階級闘争を忘れてはならない」という62年の毛沢東指示が出発点。劉少奇、鄧小平ら党内事件派の打倒が最大課題であった。76年の毛沢東の死と、四人組の逮捕により文革は実質的な終焉を迎えた。81年に公式に文革が否定された。時折、昔は忘れたが、つらいことがあったと、深い眼差しをする彼女は、文革後は医者に戻る気はなく、現在までに至っている。
  • 日本人にははじめて会った。最初は少し抵抗があったとのことだったから、反日感情は持っていたかもしれないが、話していると何事もなく普通の人間同士と思った、と素直な感想をもらす。話せばわかりあえると感じた次第。
  • 次は、典型的な上海29歳女性。典型的とはパジャマ姿で日常過ごす女性という意味である。アパートの最上階六階に住む。入ると中二階になっていて、中二階で風通しよくするための窓工事している。家の中はそのため汚れている。夫もいる。半そでシャツで工事人の監督をしている。夫の挨拶は日本語で、穏やかニコニコ丸顔。奥さんはパジャマ姿で、上にコート着ている。上海の女性はパジャマで一日中過ごし、客が来てもパジャマで、外をパジャマで歩く場合もある。その事実をここで確認した。部屋は二部屋と中二階があって、テレビはソニーの薄型大型。ソファも革張りで高いものなので聞くと、彼女の母が全て買ってくれたものだと発言する。
  • 彼女は仕事をしていなく、外出するのは大学に行く時で、昼間は会計学、夜は経済学を学んでいる。大学での勉強は夫が会社を設立した場合、その会計を担当するため。
  • 週に二三回は美容院に行きトリートメント受け、マッサージを時間かけてうけてリラックスする。趣味はカラオケで歌うこと、スポーツはバトミントン。将来の希望はもっと大きい家に住み、自宅に車庫があって運転手つきで生活することだと、気負いなく発言する。やはり、日本人と話すのははじめて。
  • 夫とはインターネットのサイトで知り合って、すぐ翌日夫と会った。それから毎日夫の会社の前で17時に待っていた。残業の時は夫の車の中で待って一緒に帰った。よい人は絶対離さないという覚悟で行動して結婚したのだ。今は思い通りである。夫が何でもしてくれる。掃除、洗濯、食事。残業して帰ってきても食事を作ってくれる。今は最高で満足している。王女様の気持ちだと笑う。
  • 実は、上海では男性が家事をするのが普通であり、これは中国の他都市と異なる。勿論、今まで訪れた世界の国々でもこういう実態はなかった。上海の女性は強いのである。もう一人強い上海女性。これは少子化の影響を感じさせる32歳の会社員女性で、浦東のアパート四階に住んでいる。上海のアパートは六階建てが多く、エレベーターは通常設備化されていない。部屋の広さは、日本でいう1DK。ここに夫と2人で住んでいるが子どもが1人いる。小学校二年生の娘だが、これは父母のところで生活している。歩いて五分のところである。
  • 通常は、会社の帰りに父母の家で娘の勉強を見たり、夕食を一緒にし、これは夫も同じだが、それから自宅に帰る。朝食は外食。結局、家では食事を作らない。たまに夕食を家でする場合は夫が作り、掃除も夫で、家のことはすべて夫がする。自分は自分のことだけする。趣味はショッピング、食べること、スポーツはしない。お金を使うことはうまいといって笑う。
  • 将来の夢は、大きな家を買いたい。今の家は母が買ってくれた。今の家でも2人なら十分で、交通も便利だが将来はもっと大きい家に住みたい。夫は日系企業に勤めていて、何でもしてくれる。だから今の生活に満足している。子どもは頭がよいので弁護士にさせたい。上海に住んで豊かさを享受できているので、今の生活状況がベストだ。ひと昔、ふた昔に生まれなくてよかった。唯一つの課題は娘の結婚相手のこと。一人っ子同士なので、よい相手が見つかるか。だが、それは遠い先のことだから、今はあまり心配なく生活をエンジョイしている。
  • 上海人はお金がすべてだと思っている人が多いが、そうではない女性もいる。30歳の銀行勤務。上海は住所表示が大雑把で分かりにくい。何回も人に尋ね、ようやく訪ねる住居のアパート群の中に入っていくと、ジャンバー姿の姿勢のよい女性が犬を連れて散歩風に立っている。この人かな、と思って近づくと頷き、犬を連れて自宅前まで案内してくれる。とにかく姿勢がよく、身長があまり高くないがすらっと見える。三階の部屋に入ると、正面に大きな等身大の鏡がある。聞くと鏡が大好きでたくさん持っているとのこと。その理由を尋ねると、鏡でしか自分を見れなく、後は他人が自分を見るだけ。ということは自分を見つめようとしたら鏡しかないので、鏡に興味があり、たくさん持ち、よく鏡を見つめることをしているという。
  • 多分、鏡を見つめることで、自分探ししているのではないかと、逆質問すると、そうかもしれないといいながら、本人が過去を語り出した。大学は映画を専門に勉強し、大学院でも同様で、映画プロデューサーになろうとしたが、上海の現実は問題があり、夢どおりにはならず、今は銀行に勤めている。クレジットカードの報告書などの業務で、大学で学んだことが役立っている程度だが、学校時代は成績優秀だった。趣味は幼い頃からバレーを踊っていたことと、中国古典楽器の演奏。旅行は自然のあるところに行くのが好き。外国にはまだ行っていないが、行きたいところは北欧。山と湖が好きだ。上海は人多く空気が悪いから。
  • 将来の目標として特に大きな希望はなく、自分に素直に生きたいという。そこで、上海の人はお金持ちになりたいという希望が強いだろうと聞くと、そういう人が多いが、自分は違う。お金にはあまり関心がない。お金を求めていくと人生にひずみが出るだろう。お金を持ちたい人はそれでよい。そういう人にお金は譲る。自分は自分の気持ちに素直に生きたいのだ。仮にそれによって問題が起きても、それでよいのだ。自分の人生は自分が生きるのだからという。
  • 何か宗教を持っているかと聞くと、無宗教との答え。それぞれ価値観が異なる人が、それぞれ生きていくのが現在だといい、自分の生き方に対し、それは難しいという人と、共感する人もいる。皆それぞれでよいという。彼女の発言を聞いて、上海でもお金至上主義者だけでない人がいることがわかったが、考えてみれば当たり前で、中国人をひとつの見方で見てはいけないと思う。過去に出会った多くの中国人は、とにかく金々という人たちが多かった。また、中国人は儲けの為には何をしてもよい、という人ばかりのイメージだったが、これが少し変化した。さらに、反日感情もそれぞれ濃淡があって、ダイレクトに接してみれば、お互いが通じ合える感覚もあることも分かった。いずれにしても、上海のインタビューで発した女性たちの言葉を聞く限り、中国人も様々な人たちがいるという事実は確認できた。これは当たり前で、一つの感覚で一国全てを判断できないことを示している。
  • ここから牡蠣に入りたい。まず、古いデータで恐縮だが、世界の牡蠣生産国のベスト10を見てみたい。(マガキ2000年実績、出典FAO YEARBOOK 殻付:単位トン)
  • この順位は以下のとおりである。
  • 1.中国 3,291,929
  • 2.日本 221,252
  • 3.韓国 207,943
  • 4.フランス 133,500
  • 5.米国 38,418
  • 6.台湾 19,972
  • 7.オーストラリア 7,292
  • 8.カナダ 5,900
  • 9.チリ 5,641
  • 10.アイルランド 5,031
  • 圧倒的に中国が他の国より多い。桁が異なる。このデータの出所は中国のどこからなのか、それがわからない。人口が多いのであるから当然だという見解もあるかもしれないが、このデータに対する疑問を持ちつつ、中国の牡蠣実態に入りたい。