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世界牡蠣研究家
山本紀久雄

ノルウェー・ベルゲン

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  • 左写真はノルウェー・ベルゲンである。ハンザ同盟の商館がある世界遺産の旧市街と、フィヨルドの観光基地でもある。2012年7月、このベルゲンから約40Kmのところに位置するRoyal Oysters ASロイヤル・オイスター社の牡蠣養殖場を訪問した。訪問して、まず、最初に尋ねたことは消費税についてである。それは当時、日本で消費税増税が政治課題として大きな話題となっていたので。
  • ノルウェーは25%という消費税であるから、負担になっていないか尋ねると「全く問題としてない」という明確なもの。ちょっと期待外れであったが、戻って日本のインターネットで検索してみると以下の内容と同じであった。
  • (質問)
  • なぜ、スウェーデンやノルウェー、デンマークは消費税の税率が25%と高いのですか?
  • (回答)
  • 福祉や公共サービスが充実しているからです。高福祉高負担といって高い税率が掛かるかわりに老後は貯金が無くても問題なく生活が送れる社会の為、国民からも不満がでません。日本はとにかく借金を返す為に消費税を上げようと福祉や公共サービスのプランが見えない増税を打ち出している為、国民からの反発も強くなかなか増税にはつながりません。日本の政治家も目先ではなく20年30年後のビジョンをしっかりもって政治をしてほしいものですね。
  • もうひとつ紹介したいのはアメリカの新聞記事である。(インク・クーリエジャポン2012年7月号)タイトルは「税金が高いノルウェーのほうが、なぜ米国より起業しやすいのか?」という記事で、その中で油田採掘現場に人材派遣する会社を起業した社長の言葉として次のように書かれている。「いい税制ですよ。公平ですからね。税金を払うのは、商品を買うようなものです。だとすれば大切なのは商品に対する金の払い方でなく、商品の品質でしょう」と。
  • この社長は政府のサービスに満足していて、自分の払っている対価は妥当だと考えていることがわかる。もう少し紹介する。「ノルウェー国民として、彼は連邦政府に所得の50%近くを納め、その他にも純資産のおよそ1%に相当するかなりの額を税金として払っている。さらに25%の消費税も払っているのだ。
  • 2010年、この社長は所得と資産に対して個人として10万2970ドルの税を納めた。私がこんな細かい数字を知っているのは、納税申告書がウエブ上に公開されていて、誰でも、そしてどこからでも調べることができるからだ。納税者が有名なスポーツ選手であれ、お隣さんであれ、調べるのは難しくない」
  • つまり、ノルウェー人は税金の支払いを「購入」、つまり、サービスの対価と払うことだとみなしているのであって、明らかに日本人とは異なる。日本に戻って何人かの経営者にノルウェーで経験したことを伝えると、皆一様にビックリする。日本では税金を「お上に取られるものだ」と認識しているのであって、自分を含め考え方の違いは大きい。

改めてノルウェーを調べてみると

  • ここで国土面積が38.5万キロ㎡と日本とほぼ同じで、人口500万人のノルウェーを改めて見つめてみたい。
  • ① ノルウェーはEU加盟を国民投票で拒否している。理由には様々な見解があるが、市場経済優先ではノルウェーの持つ特性、福祉の後退や女性の権利の後退することへのという不安があげられる。結果として、現在のユーロ危機には巻き込まれていない。
  • ② ノーベル平和賞はノルウェーである。文学賞などの他のノーベル賞がスウェーデン・ストックホルムで授与されるが、平和賞はノルウェーのオスロで授与される。ノルウェーが「平和」という絶対的な全世界共通の社会価値について、その格付け機関として位置していることは、国家ブランドとして世界に輝く存在となっている。小国ゆえになり得る立場であろう。
  • ③ ノルウェーの劇作家のヘンリック・イプセン(1828年~ 1906年)は世界的に有名である。詩人、舞台監督であり、近代演劇の創始者であり「近代演劇の父」と称され、シェイクスピア以後、世界でもっとも盛んに上演されているともいわれる。代表作は勿論「人形の家」であり、日本では婦人解放論者として受け入れられ、新しい社会思想家として受け入れられている。
  • ④ 「ソフィーの世界」で突如として世界的ベストセラー作家になったヨースタイン・ゴルデルもノルウェー人である。ノルウェーの高校教師である著者が1991年に出版されたファンタジー小説で、少年少女に哲学への手ほどきとして読んでもらうよう構想された作品。世界各国語に翻訳され、全世界で約2300万部以上を売り上げたベストセラーとなった。筆者も夢中で読んだ記憶がある。
  • ⑤ 画家ではムンクが有名であり、作曲家としてはグリーグが著名
  • ⑥ 人口に占める医師と看護婦の比率が高い。ノルウェーでは医者、看護婦の患者に対する丁寧な対応が特長である。
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  • ⑦ ノルウェーを地図上で見ると以下のとおりである。
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  • しかし、これは一面的な見方となる。地図を北極点で描いてみるならば、その見方は大きく変化する。北極というとロシア、シベリアと思いがちだが、実は、極点近くに一番島嶼が広がっているのはカナダ、それから巨大なグリーンランドがデンマーク領。 米国はアラスカを領有しているが、ロシアやカナダに比べればはるかに控えめ。そして、これらの国が面している北極海の大半は、永久流氷に閉ざされている。これに対して、メキシコ暖流が注ぐ北大西洋海流側は北緯80度過ぎまで海が凍結していない。
  • 「暖かい北極海」のど真ん中には、スヴァールバル諸島の存在が目を引き、よく見ると「暖かい北極海」海岸のすべてが、ノルウェーとロシアである。スヴァールバル諸島はノルウェー領である。この「暖かい北極海」がそのまま巨大な油田と推測すると、この油田の恩恵に預かっている国はどこかと考えながら、地図を細かく見てみると、スカンジナビア半島の海岸部はすべてノルウェー領であることがわかる。 スウェーデンもフィンランドも北極海に面していない。
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  • ここにノルウェーがEUに加盟しないひとつの重要な理由がある。ノルウェーは「OPEC(石油輸出国機構)非加盟の、世界第3位の産油国」なのに、フィヨルド地形を利用した水力発電や潮位差発電などで国内需要を賄い、石油とガスは輸出に回しているのである。
  • また、海洋油田というのは開発とリグ建設や海底パイプ施設に莫大な投資をつぎ込むが、いったん生産が軌道にのると、その後の仕事の大部分をコンピューターで制御できるので、GDPの約20%を稼ぎだすにもかかわらず、石油生産に従事する労働者は人口のわずか2%。とても効率がよいというところから、名目GDP一人当たりは97,254ドル。(2011年)と世界第三位の富裕国となっている。

ノルウェーの財政黒字

  • 最後に最も大事なことにふれたい。日本の民主党・野田政権(2012年)が「まずは増税ありき」と消費税の増税をした目的は財政再建、国の借金経営を是正であるが、ノルウェーはノルウェーの2012年見込み財政黒字は4080億クローネ(6兆1200億円)であり、これとは別に石油輸出による収入は大部分「石油基金」にプールされ、2012年3月末時点の運用資産は3兆4960億クローネ(52兆4400億円)となっている。人口が500万人であるから
  • (6兆1200億円+ 52兆4400億円)÷ 500万人=1172万円
  • という国民一人当たり黒字額となる。日本と正反対の良好財政である。それなのに所得税50%、消費税25%という高率となっているが、既にみたように国民は文句を言わないのである。
  • 国民の税に対する考え方が違うのであるが、その背景には政治が国民に納得できる福祉や公共サービスが充実を示しているからであって、ここきが日本と大きく異なるところである。

牡蠣養殖場

  • いよいよ牡蠣養殖場へ向かった。ベルゲンの西方に向かって走る。緑が多い道で信号がなく、渋滞なく快適に走る。RONG島と言っても橋で繋がっているので、同じ陸地という感じ。早めに着いたが養殖場の事務所が分からず、何人にも聞いてようやくたどり着く。道路から見える家が奇麗で整っているのは、油田関係者用の新築住宅が多いかららしい。
  • また、この島の下から石油が採れているので、その印として石油が燃えている煙突が見える。こちらに住む日本人通訳にお聞きすると、学校は無料、手術、出産費用も無料。そのため将来不安がないため貯金は少ないという。年金支給年齢は公務員62歳、一般企業は67歳、ただし病気等の理由で早くもらえる場合がある。収入は現役時代の65%程度。
  • 所得税は3万クローネまで無税。魚はタラ、ニシン、サバ、サーモン、オヒョウが多い。付加価値税は25%、食品は15%。人柄はおおらか、人なつっこい。牡蠣を食べる人は少ない。生で魚を食べる習慣なし。最近、ムール貝を食べだした。昔は毎日魚を食べ、日曜日だけ肉だったが、最近は子供が肉好きで、肉食も増えてきたようだという。
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  • さて、ようやく牡蠣について説明しだした。
  • 牡蠣を親牡蠣から産み二日目に容器に移し2週間入れる。この時の大きさは眼では分からないので、顕微鏡で見ると動いているのが分かる。次に瓶容器に入れて4週間、次の容器に入れて6週間から8週間、これで2mmから5mmくらいになる。この稚貝を三か所に売る。この会社ではヴォグストランダで養殖する。牡蠣はプラッター・平牡蠣で、平牡蠣を孵化させているのは世界でここだけだという。マガキはあちこちに存在するが、と強調する。そうだろうと頷く。
  • 孵化場を見学した後、ようやく事務所内の一室に案内される。室内のテーブルの上には、イチゴと菓子パンとコーヒーがおかれている。他国にはない歓迎ぶりである。どこでも牡蠣養殖業者はそれほど応対に気を使わない傾向があるが、ここではノルウェー産の大粒イチゴで歓迎してくれた。早速にミルク掛けて食べるととても美味い。今まで食べた中でも一番ではないかと思うほどである。この企業のブランド名はRoyal Oystersである。そこで、このネーミング意図を尋ねると、これはデンマーク国王が食したことから命名したという。
  • また、フランスにおける牡蠣の病気状況から、ここでは病気の心配はないのか尋ねると、この地には他の国から牡蠣が来ないので、病気は心配していないという回答。牡蠣の生長期間は、成牡蠣になるのに三年かかり、その間の死亡率は5から10%で少ないと胸を張る。大きさが60gから80gになったら販売する。養殖法はロングラン方式の網たな式である。この網に海草はつくが、日本よりは少ない様子。出荷価格は5から6クローネ。市場では25から35クローネ、高いと思う。ノルウェー人は生で食べる人もいるが、少ないのでレストランでは牡蠣フライも提供されている。一般的にノルウェー人からの需要は少ない。
  • 飲み物は白ワインもあるが、シャンパンで食する方が多いという。この海は冷たいので、牡蠣の化石は存在しないのではないかと尋ねると、そんなことはない、15000年前の化石が発見されているという。今後の課題としては、市場の需要が少ないので、食べる層を開拓することを着実にジックリ取り組んでいくことだと強調する。
  • 今回は、日程の関係上、養殖場へ訪問出来なかったので、この会社のパンフレットに記載されているヴォグストランダ養殖場、その概要をパンフレットから翻訳した内容で紹介したい。また、この会社のパンフレット、訪問した際にいただいたものは、言語がノルウェー語で書かれているので、内容がわからなく「英語のパンフレットはないのか」と尋ねると、後日に送るという回答であった。ところが、大分経過しても送ってこないので催促すると、ようやく英語版が届いたという経緯がある。
  • 察するに英語版は作成してなく、筆者の要望で新たに作成したのではないかと推察している。いずれにしてもそれを翻訳した内容で紹介することにしたい。
  • ただし、実際に訪問していなく、パンフレットの翻訳であるから、内容について筆者が十分検討していない、という前提であることをご理解願いたい。

ヴォグストランダ牡蠣養殖場

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  • 事務所に着くと、中年の男性が出てくる。建物に入る前に現場を案内したいと、海辺の敷地内で話しだす。Thorolf Magnesenトウロフ・マグネセン氏。
  • ベルゲン大学の教授でもある。
  • 説明の最初はホタテについて。
  • まず、ここで孵化させ、ムーレ・オ・ロムスダール県にあるヴォグストランダ(Vågstranda)のポール(陸地に囲まれた海盆)で養殖する。この場所は最近買ったところだが、1920年にオランダ人が養殖始めたところである。孵化場の海水は、1000m先深さ150mのところから引いてくる。この水を水槽にいれて、600ミリオン個産ませ、大きさ2mm~4mmにする。海の温度は冬で5度、夏で16~17度である。ようやく建物内に入って、孵化させるためのプランクトンをつくる設備見る。プランクトンは7つの餌種類。室内は温度21から22度。
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  • 「ムーレ・オ・ロムスダール県にあるヴォグストランダは、雄大な山々に囲まれた素晴らしい景色に恵まれている。地図から分かるように、モルデ、オーレスンのような町が近郊に位置する。大量のさけが地元村からルートE136を通じ日々出荷されており、大陸への輸送が便利であるばかりでなく、アジアへの空輸も可能である。
  • 過去にも商業的に成功すると見られた牡蠣生産が行われていた。ヴォグストランダにはユニークな自然環境が備わっていることから、数年後にはヨーロッパで有数の牡蠣生産地域となるであろう。他の欧州諸国の牡蠣が病気になるような非常時に、牡蠣のスパットへのアクセスが良いことがその競争力高めるのである。
  • 従って、ヴォグストランダを中心にノルウェーの牡蠣養殖業が展開し、その形、味、身の豊かさに優れた高品質なヴォグストランダ牡蠣のブランドを確立することが目標とされている。これを達成するための戦略は、今後数年間のうちに実行されよう」これが牡蠣養殖場についての説明である。
  • 以下も、この会社のパンフレットに書かれた内容を翻訳したものである。

現在の生産状況

  • 2000年以降、牡蠣のスパット開発及び保存方法に関する研究が進められた。2001年までには陸上でスパットのためのナーセリー養殖が試みられた。これが効果的であった事から2005年4月に大規模なナーセリーが設立された。スパットがその後の養殖で生き残るために十分なサイズに成長するまで、大量養殖を見込んだ大掛かりなナーセリーの再建が行われ、古い工場がアップグレードされた。スパットは試験済みの方法によって、延縄から吊されたコレクターによって集められる。ロイヤルオイスター社は幼生、スパットの段階から出荷されるまで、牡蠣の高度な品質管理をするため、孵化場から直接スパットを仕入れている。
  • ヴォグストランダの牡蠣はノルウェーの他地域の牡蠣と比べ独特である。例えば、通常をはるかに低い水温(15-16C程度、通常は18-24C)で産卵する。ヴォグストランダのポールは、6月から8月までは水深特に2.5M以上では特に水温が高いので、産卵をしないことはまずまれである。それどころか、暖かい年には牡蠣が年に2度産卵したり、一歳の幼い牡蠣までが産卵した記録もある。また、ヴォグストランダでは常に牡蠣の幼生へアクセスできる。6月にはポールの中に置かれたスパットコレクターに幼生は付着する。このタイミングは重要であり、コレクターを離す時期を確定するため、6月初め以降からの水温は注意深くチェックされる。この時期が早すぎると、幼生は藻などを食べて早く成長しすぎてしまうのである。
  • 牡蠣の産卵開始後 8、9日後には幼生が海に浮かぶ。そして定着する場所を探しあて、そこで成長する。スパットコレクターを見つけると、牡蠣はそこで生き残り、秋には収穫される。9月にはコレクターから牡蠣のスパットが全て解放される。コレクターの外側についた牡蠣は通常一番大きく、コレクターの内側についたものは、食物が制限されるため多少小さいことが多い。しかしながら、コレクターから外されナーセリーに置かれると、すぐにサイズは均等になる。最大のスパットは木箱の中に入れられポールに戻され、最小のものは翌夏に解放されるまで冬の間ナーセリーに置かれる。こうして小さなスパットは保護されることから、2、3年間でより多くの牡蠣が養殖され出荷されることになる。
  • ヴォグストランダポールでの牡蠣の成長率の高いことはよく知られている。牡蠣がスパットから消費者に渡るまでの期間は、他養殖場では3、4年かかるとされているのに対し、ヴォグストランダ養殖の小さな牡蠣はわずか2年半しかかからない。市場によっては大きい牡蠣を好むこともあり、その場合はスパットから市場サイズに成長するまでに最低3シーズン必要かと思われる。市場の要求によって、中には養殖場に残され更に大きく成長させるものもある。小さめの若い牡蠣は身が大きいとは言えないが、総合的に品質が高く、牡蠣愛好家の中では好まれることが多い。
  • ヴォグストランダポールでは牡蠣の成長が早いことから、スパットは一年目の秋には20-30gまで達し、そのペースでその後2、3年成長する。ヴォグストランダの牡蠣はノルウェー国内や他の欧州諸国の牡蠣と比べ、非常に早く市場に出荷することができる。その理由は水温が高いことによって、牡蠣が栄養分へ容易にアクセスできるためである。
  • スパットコレクターを使用するにあったては労力が必要となる。コレクターは中に経木が詰まっていて周りは針金の網状になっており、それをセメントとライムの混合したものに浸けて使われる。長期的な目的はこの過程を省くことであり、それには孵化場がヴォグストランダに建てられなければならない。
  • 更に大規模なナーセリーがあれば完璧となるであろう。牡蠣は夏には早く成長するが、この間の作業は栄養分の摂取量を高めるために牡蠣を木枠や網から取り出し清掃するものである。これには特別仕様の筏が使用される。
  • 牡蠣は延縄から吊された 木枠や網の中に置かれ、フィルターに通した海水に浸けられる。もし木枠が小さすぎると牡蠣は十分な栄養素を得ることができず、早い成長が阻まれる。この過程の作業は時間がかかり、自動的に木枠や牡蠣を洗浄する装置のような開発に向けてのリサーチがされている。 ヴォグストランダの牡蠣は常に高価であるが、それは品質の良さだけではなく、きれいに見えるように作られる努力もあってのことだろう。店頭やレストランでは商品のみかけの良さも大変重要である。

研究と開発

  • ノルウェーの貝産業に関する研究が開始され、その中で牡蠣専門のリサーチも始められた。1999年にはAkvaplan-niva社(トロムス県にある水産業コンサルタント会社)によってヴォグストランダにおける牡蠣養殖に関する報告書が発表された。
  • ヨーロピアンフラットオイスターはEU市場において高級食品としての位置を確立し、それに対する商業機会も良好と見られている。しかしながら、ノルウェーの牡蠣業界が直面する問題は、スパット生産が安定していない事である。ヴォグストランダは1990年に800万ものスパットを生産した商業的スパットに適したユニークな地域である。このポールは44万平方メートルに及び、北欧において最大の天然牡蠣のポールである。農地や森に囲まれ、ノルウェー産天然ヨーロピアンフラットオイスターに恵まれている。専門家はこのポールは二枚貝の養殖には独特な環境と見ており(モーテンセン アンド スタンド 海洋研究所)、牡蠣のスパット生産量から見るとノルウェー内で類を見ないとしている。
  • その理由としては、温度の高さ、豊富な淡水及びプランクトン等藻類、適度なポールのサイズなどの優れた環境条件が挙げられる。ヴォグストランダはノルウェーで唯一大量のスパット生産が可能となったポールである。成長期は気温にもよるが、他の良好なポールでは産卵から60-80gの市場サイズに育つまで3、4年とされている。これに対し、ヴォグストランダポールのサンプルによると孵化以降2年半で60gまで育っている
  • ベルゲンのスカルロ社は数年にわたりスパット生産に関するリサーチを行っており、大規模なEUプログラムにも参加している。“SETTLE“と呼ばれるEU資本によるプロジェクトが2008年から10年まで行われた。これは、親種を改良し、”変態”後の生存率を上昇させることによって、孵化場での牡蠣スパット生産を安定化させることを目的とした。つまり、スパットをナーセリーへ移す前の段階で、ヴォグストランダ産牡蠣の孵化場生産量を安定させるためには何がされるべきなのかを研究するものであった。ヨーロッパの二枚貝の孵化場は小規模で、独自に長期的リサーチを行うのは限られている。
  • そんな中で二枚貝スパットの安定と増加は、ヨーロッパ全体のバイオエコノミーの理解を深め、水産業の発展へもつながるであろう。上質なスパットの養殖は、健康的食物生産にとって重要であり、二枚貝養殖業の発達は沿岸地域におけるビジネス開発へも結びつくであろう。

オイスタースパット–ヴォグストランダの黄金

  • ノルウェーにおける牡蠣産業の鍵はスパットの生産である。ヴォグストランダポールからの親種によるスパット生産は、ホルダランにあるスカルプロ社の孵化場で行われる。その後ヴォグストランダにある同社のナーセリーへ移される。大規模なスパット収集作業が行われる。孵化場、ナーセリーの段階から生産は徹底化される。
  • 以上がヴォグストランダにおける長期的目標であり、時間の節約と管理化の向上を目指している。ノルウェーの他地域でもスパット生産は行われてはいるものの、少量に限られている。春、夏、秋期にはヴォグストランダポールでは大量の食物プランクトンが生息する。ノルウェーの海水は一般的に欧州南部の沿岸部と比べプランクトンが豊富である。商業生産に必要とされるスパットはノルウェーだけでなく北欧全体で不足している。ノルウェーで牡蠣養殖の商業化に適しているポールは数カ所あるが、これらの地域では十分な量のスパット生産が困難である。
  • そこでヴォグストランダが他の養殖者達と協力して、ノルウェーに主要な牡蠣産業を設立しようと試みている。大量の商業用牡蠣が他の養殖所で生産されているものの、スパットは常に不足がちである。現在孵化場がスパット供給を行っているが、規模は小さく、海水の水温低下や時化等の状況に対処できないこともある。これらのスパットは僅か10 mm以下のもので、ナーセリーにて更なる養殖が必要とされる。豊富なプランクトンに恵まれたヴォグストランダポールのみがこれを可能にできるのである。
  • ヴォグストランダポールでの更なる養殖のために出荷されるヴォグストランダのスパットのサイズは25mm以上のものである。これらのスパットは10 mm以下の他種のものと比べてはるかに生命力が強い。つまり、ヴォグストランダ以外の養殖者もこれを養殖にあたり恩恵を受けることができるのである。 大きなスパットを購入する方が、弱小なスパットよりも経済的に賢明であろう。この種のスパットは現在高値となっている。ヴォグストランダでは商業用の牡蠣養殖と共に、スパットの大量生産が可能である。
  • しかしながら、これには国内中へスパットを供給できる孵化場や大規模なナーセリーへの投資が必要となる。専門家はヴォグストランダがノルウェー内での最適地であることに同意しており、現状では産業の成功はよい地理条件が最重要であると言われている。ロイヤルオイスター社がスパット生産の牽引となり、ノルウェー内で牡蠣養殖に関する興味が深まることが期待されている。それによって水産業全体の予測が可能となり、スパット生産の安定性が得られるであろう。

ロイヤルオイスター社のヴォグストランダポールでの今後の展望

  • ロイヤルオイスター社は将来に目を向けている。
  • 市場は環境問題を重視し、環境に優しい商品を要求する中、薬品や化学物質を与えられず、自然環境で育つ二枚貝は最適な食品である。その中でも牡蠣は特有な魚介類とされていることから、大きな商業成功の機会が見込まれる。ロイヤルオイスター社の企業成長が鍵となると考えている。ヴォグストランダのポールのみを使用することによってノルウェー有数の大企業に発展することができるであろう。
  • 同社は数年間にノルウェー最大の牡蠣企業になることを目標としている。それは北欧内でも有数の大企業になることを意味する。もしこのポールが最大限に開発された場合は、同社は欧州市場で有数のスパット供給及び牡蠣養殖企業に成長するであろう。
  • ロイヤルオイスター社は欧州やアジアのレストランで出される高級ブランド牡蠣の供給を目的としている。これを達成するために同社は 、牡蠣を熟知する科学者や産業専門家と協力し、より適した投資パートナーを獲得する長期的戦略を用いている。
  • ロイヤルオイスターは依然オーナー資産によってファイナンスされており、将来的な資本増資が必須となっている。今後のステップとしては会社株式を市場性のあるものにすることである。更に、同社はイノベーションノルウェーを含む代理店ともリサーチ、開発、マーケティングに関して協議中である。ロイヤルオイスター社はノルウェー内で大量牡蠣生産への投資が実行可能であると確信している。
  • それでは結論はどうであろうか?科学者達はこう述べている:
  • 「ロイヤルオイスター社はヨーロピアンフラットオイスターの最大級の供給者となりうる可能性をもっている。高質な二枚貝のロイヤルな調達者となろう」と。
  • 以上がパンフレットに書かれた内容である。
  • しかし、ヴォグストランダのポールには訪問していないので、このようなパンフレットの内容について確認していない。
  • いずれ機会を見つけて確認し、実際の姿を皆さんにお伝えしたい。

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