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シ ド ニ ー の 町 で

  • オーストラリア・シドニーに来てビックリしたことはいくつもあるが、その代表は女性の胸が大きく、それを露わにしていることだ。ちょうど夏で、日本と反対だから12月は夏に入ったばかりであるが、日中39℃という猛烈な日差しが照りつけている。しかし、翌日は30℃と変化も激しい。
  • いずれにしても夏なので人は軽装である。多くの女性はノースリーブで胸前面が開放的な服装である。街中を歩いていても交通通信号よりも、女性に眼が行ってしまうので危険である。当然、事件は多い。若い男がレイプ事件を起こすことがある。特に集団で起こした場合の罰は厳しい。殺人よりも懲役は長いという。一生刑務所の中で過ごすことになるから、眼を奪われてもよいが、決して行動に出てはいけない。当たり前のことであるが、一応ご注意情報としてお伝えしたい。

ブ ッ シ ュ ハ エ

  • 次に驚いたことは、ハエが多いことである。ブッシュハエという。別にアメリカのブッシュ元大統領にあてつけたネーミングでない。また、シドニー郊外に出ると、すぐに雑木、大体はユーカリであり、ユーカリの種類は600以上もあるといわれているが、その林が続いている。それらの林は道路両側にどこまでも広がっていく。最初は珍しいので熱心に見ているが、いつまでも同じ景観が続くので飽きが来て眠くなる。車の制限速度は100キロである。別に急ぐ旅でもないし、オーストラリアまで来て慌てて走ることはないので、制限速度を守ってゆったり牡蠣養殖場へ向った。
  • この道路サイドに広がる木の集団をブッシュという。その名をとってブッシュハエという。これが車を降りるとすぐに近寄ってくる。牡蠣養殖場で見学している間中、顔から首から両手にハエが来る。気をつけなければならないことは、鼻の中に入ることと、口の中だ。しょっちゅう手で追い払うことになる。しかし、ハエも頑張る。しつこい。口の回りに向かってくるので、シドニーの街中で笑うような大口は開けられない。開けるとハエの絶好突撃口となる。そこで大口はできないので、口はあまり開けないで発音することになる。だから、オーストラリア人の英語は母国のイギリスに比べて発生する口の開きが少ない。口の開け方が少ないので、イギリスとの発音が違うはずであるが、そのような確認は、当然ながらこちらの語学力では全然分からない。しかし、違うはずだ。

牡 蠣 の 見 栄 え も 大 事

  • さて、話は横道にそれたので、本題の牡蠣に入りたい。シドニーのフイッシュマーケットは波止場にある。海辺である。その桟橋に出ると、もうそこはブッシュハエの世界である。いつも顔あたりで手を振っていないといけない。扇子か団扇を持参するとよいかもしれない。次回はそうしたい。ブッシュハエはフイッシュマーケットの建物内にもいるが、さすがに競りを行う会場内にはいない。競りの真剣なやりとりに遠慮しているのだ。だが、競り会場を出た魚販売のスペースにはいる。牡蠣剥きしているおじさんの所には、当然、ブッシュハエはいる。顔を襲ってくるブッシュハエを手で払いのけて、おじさんの牡蠣剥きを飽きずに見ていると、面白いことに気づいた。牡蠣を開けるには貝柱を切ることはお馴染みのやり方であるが、その貝柱を切った牡蠣を水道で洗う。ということは水道が出しっぱなしになっている、水の流れるところで、つまり、水道の下で牡蠣を剥いているということだ。自動的に牡蠣を洗っている。牡蠣の殻に入っている、海水を落としてしまうということになる。その上、牡蠣を裏返しにして深みがある殻の方に入れる。ということは、牡蠣を剥いたら水道で洗って、それを反対側にして殻に入れなおすということである。どうしてこのようなことをするのか。それを再び、FARMERS ASSOCIATION(漁業組合)の、牡蠣担当アナリストのRACHEL KING女史に聞いてみる。オーストラリアの牡蠣について、いろいろ教えてもらいたいとフイッシュマーケットに、事前に申し入れしておいたら、この赤い髪の若い、なかなかしっかりした女性を紹介してくれたのだ。彼女は、この仕事を三年しているという。フランスにも日本にも行ったことがあるらしい。牡蠣を裏返しにする理由について、女史の答えは明快である。それは「見た目をよくするため」であるという。人によっては不気味に感じる内臓の方を見せないようにするためなのである。分かってみれば簡単なことだが、牡蠣剥きのおじさんの一瞬の裏返し早業は、そのような見栄えということが根拠だったとは知らなかった。

シ ー フ ー ド ・ レ ス ト ラ ン で

  • 既に触れたように、フイッシュマーケットの牡蠣剥きは朝7時から初めて12時に終わり、そこからレストランに届けるのだから、客が食べるのは早くて5時間後となる。22時過ぎてレストランに行く場合は15時間も過ぎていることになる。夜に牡蠣を食べる場合の方が多いのであるから、実際は長時間殻から牡蠣が開けられたまま、それも貝柱が切られているので死んだ状態でいる、ということになる。衛生上問題がないのか。という疑問が素朴に湧いてくる。これに対する答えはレストランから聞いてみよう。シーフードレストラン BLUE ANGELのオーナー、MARCELLO MARCOBELLO氏に会ってみた。
  • このレストランはもう45年も経営している。イタリア出身で父からの二代目である。ここはロブスターも専門で水槽が12個もある。それも全部大きい。これだけあると海水の入れ替えだけで大変な手間だろう。オーナー氏曰く「ここの水槽の数は世界一だ」と豪語する。そのオーナーが語る牡蠣の衛生管理は「フイッシュマーケットでは毎朝200ダース程度開けている。レストランは当日の予約状況を考えて、朝10~20ダース注文すると午後に届けてくれる。牡蠣養殖業者からフイッシュマーケットへは4℃から10℃で運ばれる。これは法律で決まっている。レストランには12℃ を保って届けてくる。衛生管理法でこの温度は決まっている」また「牡蠣の選定は養殖業者の指名はしないで、フイッシュマーケットの卸元に任せている」という。このBLUE ANGELはシドニーでも有名で一階が100席、二階も100席あるから、シドニーにいかれた方は訪問されている方も多いかもしれない。