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作 業 は 大 陰 暦 だ

  • カーリング入江の長身の若い社長が説明してくれる。仕事をするには、前提として月の動きで潮位をまず計算する必要がある。日本で言う昔の大陰暦だ。実際の牡蠣養殖棚は浜辺から二キロ先。もうそこは海水が満ちてきているので、今は棚のところにいけない。その棚で3年間牡蠣を置き大きくしてから、浜辺から一キロ以内の棚に移す。一キロのところは8時間潮が引く。棚のところは2時間。6時間の差が牡蠣を大きく育てる。
  • 稚貝はフランスのアルカッションから買う。この海は冷たいのでマガキは産卵しない。養殖の網の取替えは一年ごとに行う。4センチのとき、9センチのとき、12センチのときである。売り物するかどうかの判断は重さで90g以下・以上で決める。

養 殖 場 は 2 0 ヘ ク タ ー ル

  • sign_06.jpg養殖場は20ヘクタール
  • 海の権利はライセンス制。国の水産庁の許可制。この会社は20ヘクタール許可受けている。牡蠣生産量は150万個から200万個。今年は生産順調だ。販売先はイギリスが50%、アイルランドが25%、香港が10%、フランス他が15%。アイルランド国内の販売先は近くの町のレストランやホテルに出している。
  • 牡蠣の味の特徴はお客さんが決めるものだが、あえて言えばここの牡蠣はビューティフルでハッピーだ。牡蠣は人手と時間がかかり、面倒見ることが大事だ。手間によって牡蠣は変わる。最高の条件でつくっているつもり。心がけ次第だと言う。
  • マガキに対して、ブロンの価格は二倍だが、手間が二倍かかることと、病気になりやすいということでリスクが大きい。他の養殖場でも病気が発生している。だからブロンは少なく生産している。

浄 水 施 設 の 水

  • そのようなことを聞きながらトラクターに乗って浜辺に戻る。いつも思うことだが、ファームという表現。海の農夫。海の中をトラクターで仕事する。日本では考えられない作業方法だと思う。
  • 事務所のある小屋の中は作業場も兼ねていて、そこに浄水施設もある。出荷前に牡蠣を作業場内の水槽に入れるのだ。水槽の海水は満潮のときに、作業場の前にある元石切り場の後の穴に海水が溜まるので、それを利用している。海水が汚れているのではないかと、身を乗り出して覗き込むと、社長が「大丈夫。この海はきれいだ。海水が緑色になっているのは栄養がある証拠だし、水産庁が毎週水質検査している」と質問しないのに答える。
  • ここからパイプで運んできて、その水に紫外線を当ててから水槽の中に流す。これに二日間入れると牡蠣は泥を吐く。隣の水槽は水を流してあったが、下に泥が少したまっている。これが牡蠣の吐き出した泥だと説明受ける。

販 売 方 法

  • 販売先はほぼ決まっているので、事務所にいる妹が電話で注文取るだけだ。チラシも会社案内もHPもつくらない。電話だけで商売する。アドレスを書いた名刺もないので、紙にアドレスと名前をアウトプットしてもらう。それを見ると住所と電話とFAXだけ。メールアドレスは勿論記載無し。
  • 牡蠣養殖業を始めるのに免許はいらない。従業員は男四人、女三人、それと社長の奥さんが経理している。
  • 最後に浄化槽の中から取り出して、マガキとブロンを食べさせてくれる。とても冷えていて味が締まっている。噛み締めているとジワーとカーリング入江の味がしてくる。アイルランドの牡蠣も美味いと思う。