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台 湾

  • sign_c_5_1.png彰化県王功近くの道端での牡蠣剥き
  • 2010年2月、朝の6時、成田空港に向かうための京浜東北線の中、酔っ払いの若い男女がいる。女は外国人である。見苦しいがグローバル化はこういう景観も増えるということかと思う。
  • 成田空港は混んでいる。JAL機内に入って座ると、客室乗務員があいさつに来る。美人だ。スタイルも抜群。名前を見ると台湾人とわかるが、日本語のアクセントが素晴らしい。もう一人も台湾人だが、この女性も日本語がうまい。名札を見なければ日本人と思うだろう。それほどこの台湾人女性は日本語がうまい。台湾の印象が良くなる。
  • 台湾桃園国際空港でガイドしてもらう台湾男性と会う。傘を杖代わりに持って、ゆっくり歩く68歳。日本のコンピューター会社で働き、日本に通算20年住んだというが、台湾も高齢者が多く、高齢者も元気で仕事している実態が分かる。
  • 空港で両替しなかったというと、では両替所に行きましようと、台北市内のビルの多い街中に行く。一階がTea Houseと火鍋店で、地下に降りていくところにMoney Exchangeの看板が出ている。そこへガイドが降りて行き、しばらく待つと戻ってきて3万円が10500元ですよと現金を渡される。一元が2,857円。今の相場は約3円だから問題はないが、驚いのは両替証票がないことだ。闇なのかと思う。人柄がよさそうなので証票ないことを追及しなかったが、この背景理由には美人客室乗務員による台湾への好感度が影響している。
  • 空港から向かったのは「台北魚市場」。松山空港に近い中心地から北方向の台北市民族東路410巷2弄18號に所在する。
  • sign_c_5_2.png台北魚市場入口
  • ちょうど今は台湾の正月直前、入口がお祝の派手な赤色で飾られている。入口を入ったすぐ右側に冷凍専門店があったので入る。まず、眼につくのはホタテである。250gが250元750円。一元=3円として。冷凍牡蠣もある。澎湖蚵仔と表示。300gで180元。540円。蚵仔は牡蠣のことでオアと発音するが、加えて、パシフイックオイスターともマガキとも書いてある。製造は2009.11.4で、賞味期限は2010.11.3とある。正月に備えて冷凍海鮮物を買う客が結構いる。
  • 次に「漁協館」へ行った。漁協経営のところ。入ると鮮魚が名前と価格がきちんと表示され、清潔感もある。一巡するが新鮮だと分かる。日本語のできるマネージャーに尋ねると、衛生についてはHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとったもので食品の衛生管理システムの国際標準)などの関連基準に合格しているといい、魚類は全て養殖業者や中央市場から仕入れているともいう。
  • 勿論、牡蠣もある。まず、大生蠔ゴウ、台湾読みでは生蠔をスンハオという。これは南アフリカからの輸入物の大カキで海水の生簀に入れてある。温度は7から8度に維持しているという。一個140元。これは個人売りの価格で、レストランなどへの卸売りは一個90元とはっきり説明してくれる。大体卸の方が多いという。隣の生簀も輸入物のアワビ。黄金蟹と書かれた蟹がいる。大きい場合黄金というらしい。ボストンからの大きなエビもいる。
  • 棚売り場には鮮蚵と表示された牡蠣が、ビニール一袋600gで120元360円とある。蚵の文字だけでも牡蠣を意味する。漁協館に隣接するのは「台北市第二果実野菜卸売市場」である。ここの魚屋の店頭には東石蚵が600g80元がビニールに入って売っている。240円だから安い。魚屋の隣が肉屋、その前が野菜と果物屋というより屋台的な店が、とにかくばらばらにたくさんある。
  • 店頭で水餃子をつくって売っているところの隣りでは、カナダ産の大きな牡蠣が一個110元。これは30cmくらいまで大きくなると説明してくれた男の隣で、女が弁当立ったまま食べながら店番している。こういうところが台湾風かなと思う。台湾自生のホタテが一個150元で、見るからに自生という感じである。牡蠣をばら売りしている店もある。東石産で600g130元。足元のたらいに牡蠣がいっぱい入っている。また足元にビニール袋の牡蠣、3kgで600元が4袋あって、それを台に並べる。聞いてみると朝と昼に二回牡蠣が入荷するという。今でもたくさん残っているが夜には売れるという。食べ方はスープと鉄板焼き。一年中売っているが、夏はカナダ産の大きい牡蠣が入ってくる。台湾産は小さい。
  • sign_c_5_3.png売り場の足元には牡蠣がいっぱい
  • この市場の上は住まいで五階建て。ガイドがグアバ二個買ってくれる。ガイドブックに「皮と小さな種も食べられる。しつこくない甘さ。脂っこい料理のあとに食べる習慣がある」とあり、食べ頃は8から9月ある。今あるのはおかしい。翌朝食べてみたがあまり味はしない。ふと見ると野良犬がいる。あちこちにいる。これに噛まれたら危ないので次に移動する。
  • 次はカルフールスーパーに行く。家楽福と書く。五階建てで6階は駐車場。地下は二階、地下一階が食品で牡蠣がある。蚵とありビニール袋に入った600g159元。OYSTERとも書いてある。別の氷で囲ったボックス型の販売台に、東石鮮蚵「新鮮のおいしさ」と日本語で書かれているが、産地表示は台湾となっている。販売台に8袋あって、5日間の賞味期限とある。見ていると女性が手にとって検討している。三回ほど手にとっては見、また取っては見、しかし、結局買わない。
  • 牛乳売り場に行ってみると、北海道という漢字が印字してある。勿論、台湾製である。とにかく日本産らしくすると消費者は信頼するらしく、日本語の表示が多い。中国産は信頼がないという意味である。
  • 翌日は台湾新幹線で台中に向かった。台北駅に着いたのは8時。駅構内に入ってプラットホームに入ろうとしたが、入口に締め切りのロープが張ってある。8時15分になるとロープが外されたので乗車し、定刻8時30分に音もなく、揺れもなく出発した。日本みたいにマイクが騒々しくない。車両は日本の新幹線700系でグリーンの座席。台湾の新幹線は当初貿易摩擦解消の関係で独仏連合が受注し、駅や線路の工事を行った。だが、いざ車両の決定になった時、当時の総統李登輝の一言で日本製になったという。結果として営業開始から二年間はトラブルが続発したが、日本の指導で今は落ち着き、問題なく毎日走っている。台湾人の足となっているのを証明するように、途中駅で人の出入りが激しい。
  • 台中に着いたのが9時27分。立派な駅だが、随分台中の町の中心部から離れている。これは台北を除いてすべての駅が同様で、新幹線に乗るためには車で相当走らないといけない。これが日本と決定的に違うところ。さて、改札口に現地で案内してくれる経営者が出迎えてくれた。まだ若い。後で聞くと44歳。体格がよい大男。この経営者のホンダ車で台中の街中に向かい、そこでもう一人の経営者と待ち合わせした。これから向かう牡蠣養殖場地域で生まれたという食材トレイをつくっている企業経営者である。 
  • 台湾の牡蠣養殖地としては、彰化県王功港と嘉義県東石港が有名である。東石牡蠣は「台北市第二果実野菜卸売市場」でたくさん見た。しかし、台北で王功牡蠣は見なかった。その王功牡蠣養殖場へ向かうのである。台中から約60kmあるという。
  • 王功は台湾西部の漁村で、王功蚵(牡蠣)が全省に有名。また、マングローブ林、水鳥、潮間帯のシオマネキ、ムツゴロウなどの海岸の風景が美しいことで知られ、最近では観光地として発展しようとしている地区だと、食材トレイ経営者が説明してくれる。
  • さらに、牡蠣料理もグルメたちの人気だともいい、牡蠣養殖場をテーマにした「海辺の女たち」という台湾映画でも知られている場所だともいう。この映画は原題蚵女Oyster Girl 1964年の台湾映画最初のカラー・シネマスコープ作品である。
  • 物語は、「ある漁村では政府の推奨で牡蠣の養殖を行い、村の娘たちの多くが養殖事業に従事している。そんな娘たちのひとりに明るく健康な娘ランがいる。仕事場で人気者のランは漁船員の恋人チン・シュイとの将来を夢見ているが、そんな彼女がチンの子供を身ごもってしまう。チンはランの父親に彼女との結婚を申し込みに行くが、事情を知らない大酒飲みの父親は高額の結納金を要求し、そのためチンはお金を貯めるため遠洋漁業に志願する。彼の留守の間、ランに横恋慕する不良青年が彼女に言い寄るが、この不良青年を好きな娘が嫉妬のあまり養殖場でランに喧嘩を売った挙げ句、彼女の妊娠を村人たちに言いふらしたから大変。古いモラルに凝り固まった父親や村人たちに白い目で見られ、隣村にかくまってもらうラン。やがて牡蠣の養殖が豊漁とわかり、村をあげて喜びに湧くころ、ランは難産の末に男の子を出産する。そこにチンが遠洋航海から無事に戻り、恋人たちは晴れて一緒になる」というもの。
  • そのような話題で王功に行く一時間を過ごし、海近くの街道筋に入ると、牡蠣を剥いているおばさんがいる。車を停めて尋ねると、今朝獲った牡蠣だといい、一袋600g110元で、牡蠣剥き作業賃は一袋20元ともいう。客は地元の人や地元スーパーと観光客。
  • 隣の店に「蚵仔炸」と書かれている。これは牡蠣の揚げたもの。天ぷらである。一個30元。90円。カキとイカを入れたもの二種類あって、粉は豆と米を混ぜたもの。いずれにしても牡蠣は小さい。マガキとは異なるのか。それとも種類が違うのか。今まで多くの牡蠣を見続けてきたが、世界のどことも違うような感じがしてならない。もしかしたらヨーロッパで絶滅したポルトガル牡蠣ではないかと推測するが、確かとは言えない。 いずれにしてもこの道路にはあちこちに牡蠣看板が出ているし、ここから海辺・港に行く間にも牡蠣の看板とレストランが多くある。牡蠣の名所なのだということが確認できる。車を「国園洪維身 蚵仔炸漁港店」というレストランの駐車場に車を置く。ここが国指定の有名牡蠣専門レストランらしい。
  • sign_c_5_4.png王功牡蠣養殖場
  • レストランから歩いて港へ、次に養殖場へ向かう。養殖場は広い。養殖方法は古い様式の平掛式で、地面に杭を立て養殖するスタイルである。日本では既に見られない方式で、海に胸まで入って牡蠣をとる。蟹獲りも同様。海に出る船は、強化プラスチックFRBのパイプ船。触ると軽くて中が空洞になっている。白鷺や丹頂鶴がくるらしい。白鷺はあちこちにいる。海底は黒っぽい土なので、海の色も黒い。港の一角に王功蚵芸文化館がある。入ると写真撮影禁止と表示されて、牡蠣貝殻で白鷺、丹頂鶴、人間などをつくって売っている。価格は500元以上する。高いので買わない。
  • 海岸警備隊が警備している。大陸からの密入国と密貿易防止のためであり、これはのちほど述べる東石港でも同様だった。また、野良犬がたくさんいる。野良犬が飼い犬に吠えられ、噛みつかれ逃げていく。何かの姿を示すかのように。牡蠣養殖場の現場は見たが、海辺にいた養殖業者と思われる人達にいろいろ聞くが、皆忙しいのか、それとも敬遠されたのか、すっきり明快な回答が得られないまま、車を停めたレストランに戻る。
  • ここで名物の牡蠣料理食べるのである。伝統蚵仔料理は味が餅らしくもちもちする。蚵仔炸と香甜蚵仔酥料理、これは牡蠣の天ぷら、沙地炸蘆苟料理、これはアスパラの炒め物である。
  • 料理の味はなかなか良いが、ハエがブンブンと多く、これが邪魔してゆっくり食べられない。久しぶりにハエの多いレストランを経験した。しかし、王功で見た牡蠣、あれは確かにポルトガル牡蠣だと思う。いずれ、文献で確認し、台湾の水産試験場の技術者に確認しようと思い、ホテルに戻った。
  • 翌日は台中の街中を視察した。まず、そごうデパートに行く。18階建で立派な外観である。日本のデパートは絶不調だが、台湾は客が多い。ちょうど12時になったので、15階のレストラン街に行き焼きそば100元食べる。食べ終わってエレベーターに乗ったら、何とエレベーターガールが制服着て「いらっしゃいませ」と深々と頭を下げるではないか。それも若い美人女性。久しぶりに見る、日本では死滅した風景でビックリした。それとレストラン街で驚いたのは、てんぷら店が「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という日本語で対応していること。当然に客は台湾人で、声を発している従業員も台湾人である。ここでも日本語を強調しているのだ。また、明日からの正月期間中は14階で「日本美食展」準備中とも看板に書いてある。日本が人気だと改めて分かる。
  • そごうを出て、高級スーパーCapitanへ行く。入ると魚売り場に日本人が立っていて「いらっしゃいませ」と声出している。壁に調理師免許の賞状がある。名前は赤平和彦とある。写真撮ろうとしたら「遠慮願います」と声掛けられる。どこかで見ていたのだ。絶妙のタイミングである。ここには冷凍の広島牡蠣がある。大粒である。明らかに台湾牡蠣とは異なる。広島牡蠣の説明に「大きい牡蠣。厳選した牡蠣。ミネラル分多い。海の天然ミルク」とあり、加えて、日本から空輸とあり、500g399元で3パックある。250gは220元。6パックある。
  • ホタテもある北海道産。250g420元。12パック。ホタテの北海道産500g798元。4パック。澎湖直送という牡蠣があり、9袋。300元あるがグラム数はなし。次に行ったのは地元の普通大型スーパー「大買家」。広い一階の中心スペースに魚売り場がある。台湾産という生牡蠣一袋36元。グラム数が書いていない。冷凍のホタテあり。1kg業務用マルハとある。285元。生干貝というホタテ500g169元がある。
  • 街中ウオッチングを終えて、台中新幹線駅まで行く。時間があるので駅構内を歩くと、セブンイレブン・ロイヤルホスト・ヤマザキ・モスバーガーというように、日本の店が並んでいる。日本が受け入れられていることが証明される。