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上 海

  • まず、最初は上海の魚介類市場である。訪れたのは2009年12月。
  • sign_c_2_1.png銅川水産市場入口
  • 銅川水産市場へ行ってみた。上海市中心部に程近い銅川路という通り、上海最大の海鮮・水産品卸売市場「銅川路水産市場」で、ここが「銅川水産市場」「滬西水産市場」「曹楊水産市場」という3つの市場になっている。この中でも「銅川水産市場」の規模は、市場面積6.3万㎡、店舗が1000店以上あるらしく、内外の高級海鮮水産品の集散地であるとともに、上海市内最大の蟹卸売市場として有名である。
  • ここ以外に上海東方国際水産センターがあるが、ここは上海市の中心から北東に車で40分程度の楊浦区軍工路で、上海市の都市計画により、銅川路水産市場はここへ2008年から徐々に移転をし始めている。銅川水産市場入り口で鮮魚と上海蟹が売られている。生牡蠣の大きなものがある。地元の牡蠣だという。一個3元。一元=15円換算で45円。一日60個から70個売れるという。ホタテもある。これは日本から輸入物。
  • 干したなまこがある。1キロ4元(60円)というがこれはおかしいと、案内してくれた地元の人がいう。普通は一キロ7000円から12,000円する。北海道産は7~8万円もするらしい。干し牡蠣があった。大きなズタ袋に入ったままで。机の上に置かれた名刺を見ると「上海渤海 海味食品」とある。裏を見ると商品の写真と名前が印刷されている。
  • その名刺裏の牡蠣は、蠔と書かれている。これは好haoでめでたいという発音と同じ。これは福建省の発音。日本読みではゴウ、北京語ではホウ、また、干しはカンなので蠔干はホウカンと読む。後で触れる香港では広東語であるからホウシと発音する。中国では各地域で発音が異なる事例の一つである。
  • この牡蠣は広東省から来たといいながら、奥からカビの生えた干し牡蠣を出してくる。これは一キロ50元から100元という。大きさで決まるらしい。誰が買いに来るのか尋ねると、干牡蠣は個人客が多いという。冷凍牡蠣もあって、日本人がこの店に直接売りに来るという。密輸かもしれない。
  • 次の鮮魚店に行くと牡蠣がある。どこから来たのか聞くと山東省からだという。一キロ40元。600円だ。次の干し牡蠣の店に行くと、店頭に牡蠣に似た貝があって、淡菜と書いてある。よく見るとイガイである。奥の方に干し牡蠣がある。一キロ80元。青島産という。買いに来る客は飲食店の人が多いという。店では料理の味付けに使うともいう。上海にオイスターバーはないのかと聞くと「ない」とのこと。
  • 次の生牡蠣が置いてある店をのぞき、何処産だと尋ねると海南島からという。このように銅川水産市場内の店を回って、牡蠣の産地を尋ねると、店ごとに異なっている。この実態から、中国の多くの海岸に牡蠣が存在するのではないかと推測する。向こうに大型トラックが四台停まっていて、そこに人が群がっている。行ってみるとトラックの上から生きた魚を網ですくって下におろし、それを測って売っているのだ。海から採れた魚をトラックで運んできて、それを現売しているのだ。早くしろと後ろの男が叫ぶ。トラックの中の魚がなくなれば現売は終わりだから。買った人は海水を入れた箱ですぐに自分の店に戻る。それを売るのである。
  • 昼食は市場内の店に入る。この店に入るところで上海蟹と牡蠣とアワビとヒラメを買い持ち込む。ところで、上海蟹の価格、一個100元(1500円)だと最初いう。とんでもない価格だと文句言い、買わないと言い、それを何回も言い合っているうちに、とうとう30元(450円)となる。日本人と思って高く売るつもりだったらしい。これでも地元の人の価格より高いのだろうと推測するが、上海の繁華街の店に行けばもっと高いだろうと自分を納得させ、料理された上海蟹を食べる。
  • ホテルに戻ってヤフーの通販価格を見ると、1尾660円、900円、1530円とグラム数によって異なっている。食べた蟹はこれより安かったが、いくらが適正価格かということは分からないのが現実だろう。上海牡蠣は世界的に有名である。地元の人から聞いた食べ方を紹介したい。上海蟹を選ぶ鉄則は、まず活きている蟹を探すことである。元気があるか、無いかは非常に重要で、間違っても死んでしまった蟹を食べてはいけない。それこそ食中毒の危険性がある。一部市場では、死んだ蟹をわざわざ格安で売っているが、これらには決して手を出さないように。 
  • 蟹を選ぶ場合は、まず、蟹を裏返しにして起き上がることが出来るかどうかが目安にする。蟹の足が縄でむすばれていたら、切ってもらって確認するぐらいの気持ちで選びたい。また美味しい蟹は身もしっかりと詰まっているし、甲羅もごつい。ただ、一概に大きい蟹に味噌が詰まっているというわけではなく、腹部に畳み込まれている尾の部分を見るのが重要で、味噌が詰まっている蟹は尾の部分が若干盛り上がっている。
  • 蟹を調理するときは。まず塩水に生きた蟹をしばらく泳がせておく。泥などを十分に吐かせる必要があるからだ。また、蟹には細かい毛が多く、歯ブラシをつかってしっかりとこすってとる作業を徹底させることだ。注意すべきは、白酒(パイチュウ)などに漬けた「酔っ払い蟹」は、なるべく食べないこと。上海蟹には、肺吸虫などの寄生虫が寄生している場合があり、飲用できる程度のアルコールではこれら寄生虫は完全に死なないからだ。そのため、熱湯でしっかりと煮沸することが大切で、蒸すよりもゆがく方がよく、ゆがく場合は20分から30分ぐらいじっくり時間をかけよう。
  • しかし、上海蟹には白酒(パイチュウ)が合うらしい。また、後で述べる中国の宴会はこの白酒である。度数は強くて、50度くらいある。白酒とは、中国の穀物を原料とする蒸留酒で、主原料から高粱酒(カオリャンチュウ、gāoliángjiǔ)とも、製法から焼酒(シャオチュウ、shāojiǔ)とも称される。 試しに一杯口にして、上海蟹を食べたが、確かにうまい。ちょうど訪問した時が上海蟹のシーズンであったのでラッキーだった。
  • 上海蟹を食べた後に、カルフールスーパーに行ってみた。クリスマスで買い物客が多い。店前で電気自転車を1999元で販売している。これが上海に多い。街中で音立てずに走ってくる。結構速い速度で来るので危険だと思う。ところで、上海は空気がよくないのに、街にマスク姿は全くないことに驚きつつ、カルフールから上海書城という書店に入ってみた。大きな書店の中を歩いて行くと、村上春樹のコーナーが三階に広くある。ノルウェーの森と海辺のカフカ買って、レジに行くとまたもや驚く。
  • sign_c_2_2.png村上春樹コーナー
  • ワゴンに本を溢れるほど載せた人が数人いる。ざっと数えてみて一つのワゴンに50冊はある。これをレジ打ちするのであるから、当然に時間がかかるが、それよりどうしてこんなに買うかである。図書館員なのかもしれないかなと思うが、図書館なら出版社から直接購入するだろう。するとやはり個人客か。クリスマスプレゼントか。それとも地方から出てきて、上海に行くので、知人友人から依頼されて買っているのか。そのような推測をしつつ待つが、レジにたどり着くには絶望的な時間が必要だと気づく。
  • 別の階のレジに行き、ようやく支払いを済ますが、上海では興味深い事が多い。
  • 次に第一食品商店、南京楼通りにある高級食品店に行く。野生特大湊菜と書いた牡蠣が売られている。干し牡蠣。大連産とあり青島で加工とある。500g78元。1170円。一キロだと2340円になる。
  • 16時の店内は客であふれている。なまこを見てみると、特AA1級大連産500g9800元。147,000円。一キロだと30万円となる。すごく高い。これを買う中国人がいるということだろう。なまこは刺参と書く。なまこは世界の温帯から熱帯にかけた海域で獲れるが、その消費は殆ど中国という特殊性のある食品である。中国人はなまこは男を元気にさせるものだという神話、つまり、精力剤ということで食べられているらしいが、価格にはビックリである。
  • 日本のリンゴもある。新世界が一個88元1275円。高い。噂に聞いていたがなるほどと思う。上海の街をウオッチングしていると、人もモノも多様で、一つの価値基準ではかれないと再び感じる。
  • 翌日は車で浙江省の寧波まで走り、そこから強蛟鎮(チャンチンチャン)という昔風の海辺の小さな港町に行った。上海のホテルを出たのが8時半。途中、上海万博会場の上を通る高速道路を走り、一回だけドライブインで休憩し、着いたのは13時だから、4時間半かかった。距離は350㎞位。一回しか休憩しなかったのは、一か所しかドライブインがないからである。
  • 高速道路を降りると、にこにこ顔の金持ち風の男が、新車のアウディ大型車で待っている。キティグッズを製造している会社の社長である。キティグッズはパリで人気がある。高級ブティックが軒を連ねているサントノーレ通りの、流行品を展示したトレンドショップがあって、そこにキティグッズがしっかりと並んでいるように、ここ数年、とても人気が出てきたサンリオキャラクターグッズである。それを製造しているのであるから儲かっているのだろう。顔が豊かに盛り上がっている。
  • ところで、この社長が突如登場したことには訳がある。中国は広くて民族も多様で、言葉も多様。公用語兼標準語は北京語であるが、地方に行くと北京語が通じない所もある。特に地元の人と話す場合は、その地の言葉が使えないと仕事にならない。そこで、北京語の人に案内してもらったのだが、この人物が浙江省では北京語は難しい、現地語の出来る人がいないと進まない、というわけで友人の金持社長と連絡取って高速道路を降りたところに来てもらったわけである。
  • ちょうど昼時、社長がしばし走って連れて行ってくれたところが、峡山海という海上のレストラン。ここまで行く途中の道、高速道路とはまったく異なる舗装されていない道である。これはまだまだ中国の公共工事は盛んにおこなわれるだろうし、そうすると経済成長は続くだろうと思う。
  • sign_c_2_3.png木造筏上レストラン
  • レストランは木造筏の上に建物が乗っている。食べる魚類は、一室に集めてあり、そこで魚を選び、それを料理してもらい別室で食べるというスタイル。いろいろ選んだ。いいだこ、ほたて、地元産の見たことない貝、シャコ、とても小さい牡蠣。この牡蠣の名前を聞くが、地元では牡蠣としかいわないという。
  • ビールは大梁山口卑酒を飲み、次に生牡蠣が出てきたので白ワインを注文。牡蠣には白ワインと決めている。世界どこへ行っても牡蠣と白ワインはセットであるので。持ってきたのはGRAND RAGON 21年葡萄とありRIESLINGである。白ワイン用の葡萄である。早速、一口飲む。味はうすく、さっぱりし過ぎて、コクがない。と表現するより、そのような味を述べる以前のワインである。はっきり言って未完成ワインという感じで、一口でやめる。
  • 牡蠣は2㎝から4㎝位で小さい。味はコリっとしてよい。地元の人は生で食事前に食べるという。この海は水深13メートルくらいだと社長が教えてくれる。この海には原子力発電所が二年前にでき、海水温が6度上がったと養殖漁民が政府にクレーム付けているし、それと重金属もどこからか流れ出し、牡蠣に影響を与えて、牡蠣の育ち方が変わってしまったと、これも社長が解説してくれる。また、社長が秦の始皇帝によって不老長寿の薬を探しに日本に行った人物、徐福について解説してくれる。秦の始皇帝に徐福が「はるか東の海に蓬莱・方丈・瀛洲という三神山があって、仙人が住んでいるので不老不死の薬を求めに行きたいと申し出、莫大な資金を調達して出発した」ところがこの海域だという謂れだが、この話は日本でよく知られていて、青森県から鹿児島県に至るまで、日本各地に徐福に関する伝承が残されている。徐福ゆかりの地として、佐賀県佐賀市、和歌山県新宮市、鹿児島県いちき串木野市、山梨県富士吉田市、宮崎県延岡などが有名である
  • 食事を終えて、向こうの沖合に見える牡蠣養殖のブイが見えるところまで、ボートで向かった。沖合に元気で走り出したと思ったら、突然、エンジンの切る音と共に、ポートは停まる。何か事故かと思ったら、ガソリンが無くなったから給油するという。エンジンはYAMAHA製、世界のどこでもボートはYAMAHAのエンジンである。
  • さて、給油する方法を見ていると、ここでもビックリ仰天、自分の口でチューブからガソリンを吸い出してから、チューブをエンジンタンクに移すのである。大昔の日本もこうしていた人がいたと思いだす。ガソリンが給油されたポートは元気よく走り出す。牡蠣養殖地のブイのところに到着する。写真のようなはえ縄式養殖法である。
  • sign_c_2_4.png強蛟鎮(チャンチンチャン)養殖場
  • ボートで浜に戻って市場へ行った。市場ではおばあさんが牡蠣剥きしている。見るとタイヤについた牡蠣を剥きとって容器に入れている。小さい牡蠣である。どのくらいこの牡蠣剥きをしているのか尋ねると、そうだなぁ20年以上もしているとの答え。この牡蠣の名前は何かと尋ねてみたが、答えは牡蠣としか返ってこない。
  • 市場ではタイヤでなく、板の棒状のものついている牡蠣を剥き、そこで売っている女性もいる。牡蠣以外にも様々な魚を売っている。小さな市場である。