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チ ロ エ 島

  • いよいよ牡蠣養殖の本場、チエロ島へ生産部長のスズキ車で向かう。プエルト・モン南西から55キロ。フェリーで渡る。チエロ島ではフスト・ガルシアさんFUST GRACIAの養殖場を視察した。真向かいに牡蠣研究所があって、その先の海で牡蠣養殖をしている。ここで養殖するために、海の使用許可を取るのが大変だった。国から借りるのだ。使用届書、生産方法、何年もかかったという。

牡 蠣 ・ ア ワ ビ ・ ホ タ テ ・ イ ガ イ を 養 殖

  • この海の干潮差は六メートル。海の干潮は南半球でも北半球でも同じ。海と時期によって大潮・小潮となるだけと生産部長が説明してくれる。これは知らなかった。
  • しかし、月は反対に見えるという。フスト・ガルシアさんと生産部長は友人である。ここで牡蠣・アワビ・ホタテ・イガイを養殖している。
  • フスト・ガルシアさんから聞くと、以前は六ヶ所のチリ牡蠣養殖場があったが、今は四ヶ所となっている。フスト・ガルシアさんは20年前潜水夫だった。つまり、この地区の漁業者。一人一人が海に潜ってアサリと牡蠣等を採って生計を立てる職業。それが可児さんと知り合って、技術指導受けてここで養殖を始めた。
  • チリでは衛生法が改正になり、生ものを食べるのが制限された。牡蠣は眼の前で剥いたものしか食べていけないことになった。その結果、国内消費が落ちている。チリ牡蠣は天然ものと養殖ものが市場にでている。今はまだ天然ものが採れるが、このまま採り続けていくと、四五年後には絶えるだろうと心配している。そうなると養殖ものだけになると思われる。

ロ ン グ ラ ン 方 式

  • ロングラン方式ロングラン方式
  • 養殖方法は、プラスチック製の8センチくらいの筒を、紐でつないだものにホタテ貝に稚貝をつけて海につるす。一つのホタテに50個つくが、最後に8個くらいなったところで、ロングラン方式にする。ロングラン方式とは、発泡スチロールの塊を海に浮かべ、それに紐をつけ、碇をつけ流されないようにして養殖する方式である。筏の替わりに発泡スチロールの塊を使う。
  • ここは北風が強いので、北側に山並みがあるこの湾が養殖に適切だと選定したという。台風はない。それまでチロエ島の養殖は、海が川となって入り込んだところ、つまり、静かな海で養殖していた。
  • フスト・ガルシアさんが牡蠣を養殖している浜辺には、牛が放し飼いになっている。どこの牛か知らないとフスト・ガルシアさんが笑う。ここでは犬はつながれているが、猫の親子が遊んでいる。のどかなものだ。フスト・ガルシアさんのところは、男三人と女一人の社員がいる。いずれも6年勤務している。
  • さて、ロングラン方式は120メートルの紐に8万個から10万個の牡蠣をつける。チリ牡蠣は成長牡蠣になるのに4年かかる。1年で8万個から10万個採れる。マガキは20万個採れる。マガキは1.5年で成長する。イガイも1.5年。
  • ここでの採苗はコンクリートのプール、4メートル四方程度のもの、ここでチリ牡蠣は12月から1月、マガキは9月から3月。ここから海に出すタイミングがポイント。これを生産部長に相談して決めるのだ。

大 き さ で 区 別 す る

  • 出荷先は仲買人を通してスーパーへ。これが80%。レストラン・市場が20%。仲買人から週二回電話があり、チリ牡蠣52個が二キロであるが、これを袋に入れラベル貼ってプエルト・モンの仲買人のところへ運んでいく。小はビクトリアといい4.5センチから5センチ。中はコリエント(普通品)といい5センチから5.5センチ。大はセミエクポルタといい5.5センチから6センチ。エクポルタシオンは6センチ以上。しかしこの大は実際にはない。
  • マガキは7センチ以上しか出荷しない。昔は重さで行っていたこともある。お金は30日後の小切手で受け取る。その際に10%の金額がカットされる。仲買会社は二社ある。この10%の手数料は仲買で洗浄したり砂を取ったりするコストである。最初に聞いたときは力関係で搾取していると思ったが、実際に仲買のアクアプロAQUAPURO社に行き、洗浄と出荷体制を見学してみると納得できる。中には砂を多くし重量を重くする漁民もいるらしくチェックしているのだ。
  • あわびも養殖している。あわびは一個1200ペソ(260円)で売れる。チリ牡蠣は一個40ペソ(9円)。マガキは7センチ以上で1個70ペソ(15 円)。なまこの養殖も研究中。マガキは編み式も併用して養殖している。島内の別の海では地蒔きで養殖しているところもあるので、結局、牡蠣養殖方法は「ロングラン方式」「地蒔き方式」「網式」の三つが混在している。

半 端 で な い 悪 路

  • チロエ島の本通りはすべて完全舗装された立派な道路であるが、養殖場に入っていく海への道は、ガタカタ道路で、そこを生産部長のスズキ車で走る。道路は結構起伏があり、半端でない泥と水で埋まっている。坂の途中で車を止めるともう終わりである。滑って坂を上れなくなるので突っ走るしかない。久し振りに悪路を経験した。昔の日本はこうだった。懐かしい。

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