073.jpg

HOME > ストーリー > 世界のかき事情 > クロアチア > クロアチアその4

牡蠣養殖場の海

  • 以上が生物学研究所の記述で、この前提で牡蠣養殖の実態を確認するため、養殖業者のところに向かった。10時に港に着く。港には養殖業者の家が立ち並んでいる。家の裏側に続く小山みたいな丘には大きな木がなく、石灰岩だらけで、鉱物は何もとれなく、果実としてイチジク、アーモンド、オリーブ程度しかできない。
  • 家はすべて石造りで、結構おしゃれな感じの建物であり、港もコンクート造りで整備されている。また、海に出る船もまだ新しく、これなら安全だと判断する。世界中の海で、地元の牡蠣養殖業者によって海に案内受けているが、中にはとても危ないと思われる船もある。しかし、ここはしっかりしているという感じをもつ。

Croatia_04_01.png

Croatia_04_02.png

Croatia_04_03.pngムール貝が大量に陸揚げされている。これを600㎞離れた町に持っていくのだと、トラックに積み込んでいる。

  • ここでの養殖は、牡蠣はブロンEuropean oysters (Ostrea edulis)と、ムラサキイガイ(Black mussel、Mytilus galloprovincialis)フランスではムール貝( moule)と呼ばれる二種類である。案内してくれる養殖業者は、父が四代目で今は五代目の息子と兄弟三人で経営していて、マリ ストン湾牡蠣全体の10~20%占めているという大手である。また、この海には60~70業者がいる。牡蠣は3月4月が全体の50%売れる。この時期の牡蠣は一番身がつくし美味いという。客は一年中あって、フランスのようにクリスマス時期だけ特別大量に売れることはない。
  • 食べ方は生が90%で、調理する場合はフライ、焼く、牡蠣スープなど。ここの牡蠣は独特で、同じものはモロッコにしかないと聞いているという。牡蠣種の採苗時期は5月と6月で、海から採る。ということは天然稚貝ということになる。この稚貝をプラスチック網で採描したままで育てる方法と、セメントにつけて二個ずつ逆向きにしてつるす方法を採っているが、その区別は適当にしているとのこと。牡蠣養殖ブイは10m深さに下ろしている。

Croatia_04_04.png

Croatia_04_05.png

  • いよいよ養殖海域に着くと、と言っても港からすぐのところで、この海では黒タイ・チヌが牡蠣を食べてしまうので、牡蠣養殖地の周りを網で覆っている。大体売れるまでに生育するには3年かかるが、一年半で売れるまでに成長する海域もあるがといいつつ、あそこだと指さして示したところは、橋の下あたりで、下から水が湧いているところである。地下水に栄養があるのだろう。
  • 海は静か。今年一番ではないかという。今までは寒くて荒れた海だった。海底が見える。透き通ったきれいな海。沖縄の人が沖縄よりきれいと言ったという。山と言っても小山だがそのすぐに海があり、小山は松があり、島にも松があって松島にそっくりの絶景。

Croatia_04_06.png

Croatia_04_07.png

Croatia_04_08.png

Croatia_04_09.png船を止めて、海中から牡蠣を上げる。ブロン牡蠣。この牡蠣はこのマリ ストン湾で昔からある地牡蠣であるが、一時と言っても30年前以上だが、マガキを導入したことがある。塩の業者の紹介で。

煉瓦についた稚貝を海に入れた。すると繁殖力強く、たちまちブロン牡蠣を圧倒していく。これはダメだと慌ててマガキを処分したという。海はきれいなので改めて浄水する必要はない。そのまま出荷できる。

但し、毎週、牡蠣は衛生検査をかかさない。牡蠣は全部ドブロヴニクへ出荷。海がきれいなのは周りに工場が無く、人も少ないのがきれいの要因だろうともいう。

Croatia_04_10.pngこのアドリア海の海水浄化度をグラフ化したものが生物学研究所資料にあったので左写真を紹介する。
海水浄化Legend: レベル度をExcellent優良が青色、Good良好が緑色、Sufficient可が黄色、Poor乏しいが赤色で2011年調査であるが、見事にクロアチア海岸は青色で埋まっている。

  • ここの気温は昨年が最高35度まで上がったが、冬も寒くマイナス気温になる。特に今年は海水が凍ったほど。ところで、ひとつ相談だが、この船であの島へ行き、島は自分の所有物なので、海から採りたての牡蠣を食べてもらおうと計画している。一人20ユーロくらいを考えているがどうだろうかというので、それはグッドアイディアだと賛成する。理由はやはり採れた海のなかで食べるのが一番だからと伝えるとニコッとする。
  • さて、海から採りあげた牡蠣を、港に持って帰り、一口食べてみてびっくりした。昨日、レストランで食べた牡蠣とは全然違う。美味い。身が盛り上がって自然の甘さが気持ちよく、海のきれいさが舌に心地よくしみこみ、豊かな感覚が口の中に広がっていく。絶品である。今まで世界各地で食べたが、このクロアチア・アドリア海・マリ ストン湾が一番ではないかと思った。だが、すぐに思いだした。
  • そうだオーストラリアのタスマニア島もこの味わいだったと。タスマニア島で、ユウカリ樹木を背後に、海と川に挟まれた静かで穏やかな一角の牡蠣養殖場、今まで世界中で見た牡蠣養殖場では、一番理想的な環境だと感じたリトル・スワンポート LITTLE SWANPORTの牡蠣と同じくらいの素晴らしさと認識した。そのような判断結果を、社長と日系ガイド青年に伝えると「そうですか。ここは世界一ですか。
  • 確かに海はきれいで、牡蠣は美味いと思っていたが、専門家から認められたのは初めてで嬉しい」と満面の笑顔である。価格を聞くと1個10から12クーナという。昨日のレストランは1個6クーナだったから、やはり品質が落ちていたのかと納得し、自分の舌は嘘をつかないと再認識した次第。

Croatia_04_11.png

Croatia_04_12.png

クロアチアの牡蠣が素晴らしいことに驚いた今回の世界牡蠣事情であった。

1234