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グ ァ ラ ツ バ 湾 に 自 生 す る 牡 蠣 (ネイティブカキ)

  • ホテルのロビー朝8時、マークスさん26歳が来る。クリチバ大学卒で、現在は同大学のGIA(Grupo Integrado de Aqüicultura e Estudos Ambientais 水産及び環境研究グループ)に所属し、クリチバから約120km南に行った海岸の街、パラナ州グァラツバ市GURATUBA、人口約3万人で、クーチマールCultimar計画を進めている。クーチマールとは、漁師たちの経済状態の向上を図るとともに、自然環境保護を目指し、地元の産業について、技術支援を進めているもので、スポンサーとして英国のHSBC金融グループなどが参画している。
  • そのひとつ、グァラツバ湾に自生する牡蠣(ネイティブカキ)、日本産のマガキとは明らかに異なる品種であるが、この牡蠣養殖支援を2005年からマークスさんのグループ六人が担当している。この六人は男女三組メンバーで、既に二組は結婚している。マークスさんのパートナーは日系三世の女性で、まだ結婚していないが許婚になっていると車内で語ってくれ、今までの経緯も教えてくれる。しっかりした若者だと思う。まず、2005年からの二年間は、地元の環境、どういう生活状態か、フィールド調査から始めた。文化も生活条件も違う人たちだ。わかったことは、その日暮らしであるということ。将来を考えない生活。そうならば安定したその日暮らしを確保させたいということにした。共同でグァラツバ市の市場で販売する、共同や個人のレストランを作る、それを高さ400Mの山の下にあるグァラツバ海岸村で始めのである。
  • ホテルでクーチマールの牡蠣養殖活動をインターネット検索すると「メンバーが関与した牡蠣養殖は、パラナ州の海岸にある次のオイスターレストラン、 オストラ・ビバで求められます。連絡先:ハミルトン(41)9982-4511 Eメール:tinhokirchner@hotmail.com 」と出でくる。他の店も紹介されているが、今日はマークスさんにこのハミルトンさんのところに案内してもらうことになったわけである。
  • ロングラン方式テジクッパ
  • ロングラン方式ハミルトンさんの養殖場
  • さて、クリチバからグァラツバ湾へ向かう道筋は、峠道を越す山道の間から時折海が眺められ、豊かな森林とともに美しい景観が連続している。ブラジルは緑多き土地だと、改めて納得する。グァラツバ市に着き、ハミルトンさんのところに行くため、舗装された海沿い道路から山側の横道に入ると、そこは泥道のガタガタ上り、周りは欝蒼としたジャングルとなり、ハバナが実っている。
  • しばらく走ってようやく車が止まったグァラツバ海岸のカバラクマラ地区、降りたところに看板がある。OSTRA VIVA(生牡蠣)、その下にCultivo de Ostras(養殖場)とあり、クーチマールとも書かれている。クーチマールが牡蠣の品質保証と水質検査を含め担当しているという証明である。これはさすがだと腕組み、うなずこうとした時、皮膚が露出している首筋と腕に、蚊のような虫が一斉に噛みついてきた。事前に日本から持参した虫除けスプレーで防御していたのだが、ブラジルのジャングルに生息する虫は強く、珍しい日本人が来たというので大歓迎を受けることになった。しかし、出迎えてくれた長身痩躯のハミルトンさん(35歳)はTシャツ、半ズボン、サンダル姿で、虫なんか何ともないという笑顔での歓迎である。虫と共生しているのだろう。因みに、日本に戻って一ヶ月経過したが、ようやくこの虫に噛まれたあとが消えかけたところである。医者に行ったが、どういう虫なのか、それを説明できないので、一般の虫さされ用の薬を塗ったのであるが、それでも一ヶ月という期間を要するほどの虫の強さであった。
  • さて、ここは自然との共生地区であり、環境保護地区となっていて、海辺には大量のマングローブが繁茂している。今までこれだけのマングローブ地域を見たことがない。マングローブは雨量、地形、潮流のサイクル、太陽光線、養分量などの影響が大きく、特に湾内や外海からの波の影響が少ない島地域に生え、熱帯気候で年間降雨量が1500mm以上の場所に多い植物であって、世界中のマングローブ地域面積は16万㌔㎡、その内2万5千㌔㎡がブラジルにあり、高さ20mにもなり、寿命は最高100年とも言われている。
  • また、マングローブ生息海域はプランクトン多く、木の根元や周りには多種類の昆虫、小魚、海老、カニ、貝が生息し、これらを食べ物とする魚や鳥が寄ってくる。さらに、マングローブ根が自然フィルターの役割を果たすため、一帯の水は綺麗で、グアァツバ湾内のマングローブ地域は、水の汚染度も殆どゼロに近い。そのような説明を受けながら、虫に食われつつハミルトンさんの養殖地の海辺まで歩くと、そこはマングロープに囲まれた入り海で、東南が外海とつながり、北西から川がいく筋も流れ込む、絶好の牡蠣養殖地となっている。素晴らしい景観を見回し、ふと、足もとのマングローブに付着した牡蠣を見ていると、虫に噛まれた痒みを一瞬忘れ、しばし言葉を失う。多分、マングローブが発生させるクリーンなマイナスイオンが、美しい景観と共にこちらの体を浄化しているのであろう、何とも言えない気持ちよさである。

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