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ロ ー マ の 魚 市 場

  • このローマに対する忠告、一般のイタリア人は着実に生活していると確認できたからである。というのも、ローマから列車で移動したアドリア海側のマンフレドニアManfredoniaで、地元出身の若い人たちが新しい牡蠣養殖システムに挑戦している実態を見たためで、ローマの事件は特別に残念だと思っている。このマンフレドニアについては、後段でお伝えするとして、まずはローマの魚市場を紹介したい。
  • 土曜日の朝5時にホテルを出発し、ローマ市郊外の市場CENTRO AGROALIMENTAREへ向かう。直訳すると農産物食材市場となる。ローマの中心から東側、外郭環状線14号を降りていく。中心から約18㎞。行ってみると開いてはいるが事前に許可を受けないと入れないシステムという。ただし、土曜日は8時から一般客対象にオープン化されるとのこと。そこで他へ回って後で訪れようと車を引き返す。日の出は6:30頃になるので、まだ真っ暗だ。
  • 6時に到着したのはMERCATO LAURENTINOラウンティーノ市場、この名前は通りを冠したもので、一般客向けの市場。30店くらいが入っていて、肉、野菜、魚が中心でワインの量り売りもある。営業時間は月、水、木、土が7時から14時まで。火と金が7時から19時までとなっているように、曜日によって異なるオープン時間である。当然、まだ開店前の準備中であるが、恐る恐る入ってみたると、店頭に今朝4時に絞った牛乳で作ったモッツァレッラ Mozzarellaチーズがある。モッツァレッラという名前は、その製法にちなみ、「引きちぎる」を意味するイタリア語「mozzare」に由来するとされるらしいが、今日中に食べないといけないもの。保存剤は一切入っていない。新鮮である。
  • ところで、金曜日はキリスト教の関係で肉食を食べず、魚を食べる人が多くなるので、魚市場の閉店時間が遅くするのは分かるが、火曜日がどうして金曜日と同じなのかはわからず、ローマ滞在中にいろいろな人に聞いても答えが得られない。習慣化しているのだろう。市場内の魚屋店頭に行く。というのもここの店主・社長が、この市場の経営者らしいからである。店頭に新鮮な魚がいっぱい並んでいる。ショーイングが素晴らしいので、さらに新鮮に見える。マガキがある。
  • 社長に牡蠣はどこから仕入れしているのか尋ねると、フランスからだという。これは以後、ローマで視察したところ全部で、すべてフランス産との答えであった。ということはイタリアでは牡蠣養殖が行われていないのかということになる。だが、今回イタリアを訪問したのは、実際に牡蠣養殖が展開されているからである。イタリアの牡蠣はイタリア国内で流通していないのか。流通していないとすれば、どこにイタリア産は行っているのか。まだ暗い日の出前に疑問が大きく膨らんでいく。
  • フランス産の牡蠣の仕入れ先はCam s.r.lと箱に印刷されている。これはフランスのどの地方かと聞くが分からないという。いちいち仕入れ先まで検討していないだろう。タグを見たが地方名は書いてない。価格は1kgが8ユーロ。1kgで7から8個くらい。しかし、とにかく寒い。気温はマイナス一度。ようやく少し明るくなり、お客が入ってきた。イタリア人は早起きだ。それはこの後行ったスーパーが8時から開いていることでもわかる。
  • 明るくなったので、再びCENTRO AGROALIMENTAREに向かう。環状線で行く途中、マクドナルドでコーヒーを立ち飲みする。椅子に座ると価格は倍になるので。飲み終えて外に出るには、スーパーみたいな品物がたくさん並んでいるところを通らないといけない。ふと見るとビールもウイスキーもワインもある。高速道路の環状線休憩所にアルコールがあるという。まず日本では考えられない。それと漢字のパッケージ商品もある。見ると「泉」と印字され、その上にBIONSEN、美温泉という発音のローマ字書き。これは5年ほど前から売り出され、テレビでもコマーシャルされ、商品コンセプト訴求は、日本女性の肌が奇麗なのは温泉に入るから、というところからネーミングしたらしい。日本の温泉はこうやって評価されているのかと、改めて思う。
  • さて、CENTRO AGROALIMENTAREに着いたのが6:45頃。すでに7台の車がゲートで待っている。土曜日を楽しみにしている人たちだろう。7時になったので入場料2ユーロ支払い入る。市場は大きなかまぼこ状の建物。奥行きは200mあるだろう。両側に卸店が50店くらい並んでいる。既に販売店用の魚介類取引は終わっている。この時間から一般客相手の商売になる。
  • i_02_01.pngローマ市郊外の市場CENTRO AGROALIMENTARE
  • 牡蠣は入り口の店にあった。やはりCam s.r.lのもの、ただし価格は1kg3ユーロ。次の店はブルターニュ産1kg5ユーロ、その先は1kg6ユーロ。それぞれ違う。大きさとかで異なるのだろうが、先ほどのラウンティーノ市場よりはかなり安い。やはり卸市場は安いということが証明された。ところで、このCENTRO AGROALIMENTAREのホームページを検索すると、つぎのような株主構成である。
  • 「ローマ農産物市場"Centro Agroalimentare Roma)」を所有する法人である「CAR 株式組合企業(Scpa)」は、主に公的資本(主要株主はローマ商工会議所であり、株主となっているその他の公的機関はローマ市、ラツィオ州、ローマ県である)の参加と、最大手の信用金庫3行(Capitalia Spa, BNL Partecipazioni、Banca Antoniana Popolare Veneta)、大規模な複数の公益事業を行う会社(Acea),商業オペレーターの代表団体(Romamercato '87 株式組合企業(Scpa)とA.G.O. Roma)や建築業界オペレーターの代表団体(Costruttori Romani Riuniti Grandi Opere株式会社(S.p.a.))といった重要な民間資本が参入する株式組織を有する株式組合企業 (Società Consortile per Azioni)である。 1986年に設立された」
  • 次に向かったのはAZZURRA PESCA青い魚s.r.lという社名の卸店。社名の下にin diretta con il mareとある。海から直送という意味。ローマ時代の城壁すぐそばの角に立地する店で、結構広い。ローマ中心部では一階は全部が店舗で、二階以上は住居である。ローマではこれだけ大きい店は少ないらしい。ここに着いたのは8:50、ここはレストランに卸している店だが、既に魚は完売して全部なく、出荷済み。レストランから前日に注文あって届けるシステム。もうここで40年間営業しているという。
  • 牡蠣はフランスから入る。ブルターニュ産。契約しているところから。週二回に分けて100kgから150kg仕入れる。時には200kgくらいもある。ブロン(ヒラカキ)もマガキもある。ブロンは高い。日本食レストランにも数件卸している。例えば「すし千」だという。地元の人に聞くとここは日本食もどきの店だというが。その他に大学内の店にも出しているという。ローマ人はフランス人より牡蠣を食べるのは少なく、ローマ人の食べる時期はRの着いた月は少ないという。まだRの件がここでは信じられているのだ。
  • ところで、この店で重要なことを聞いた。イタリアのカキ養殖場は三か所あるという。ヴェネッツィア近くのchioggiaとナポリ近くのpuozolliとアドレア海のmanfredoniaマンフレドニの三か所。ようやく養殖地の話が聞けた。
  • 次に向かったのは、1930年代に造られた住宅が並んでいる中の市場。MERCAT
  • PIAZZA EPIRO。5年前に改装して地下を駐車場にして改装した。その前はバラックだった。このマーケット市場50軒位あって何でもある。便利だと感じる。魚屋は四軒。一見して今まで見たところと新鮮さが異なることが分かる。魚が輝いていない。ショーイングにも工夫がなされていない。牡蠣の価格は1kg10ユーロから12ユーロ。明らかに高い。次に向かったのは、すぐ近くのスーパーSMAイタリア地元の資本。朝8時から営業。ここの魚屋は新鮮風に見せるライトの使い方が上手。おばあさんがイカとアジを買っている。いずれもすぐ食べられるよう切って洗って出してくれる。
  • 牡蠣について聞くと、フランスから入ってきて、火から土まで5日間で30kg位売れる。1kg6.5ユーロ。今日は土曜日ですでに完売したという。これがローマでの牡蠣販売状況であるが、牡蠣の位置づけは高くないと感じた次第。

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