• 社長の車で海に行く。養殖場は事務所から車で10分のところなので8時30分に着く。養殖場の広さは30ha。今は水槽に保管しているので、海に牡蠣は少ない。愛犬のココを連れてきて、ココは海が大好きとのことで走り回っている。
  • 養殖場となっている海はWattenmeerヴァッテン海で、ナショナルパークである。だから環境維持に厳しい条件が課せられている。養殖しているのは、このヴァッテン海の中のBlidselbucht ブリゼルブラト海である。海岸から200mくらいのところに牡蠣棚がある。長靴に履き替えて牡蠣棚までココと一緒に歩く。風は冷たく強い。これが11月普通の気象条件との事。海水温は5~6度。あと6時間経つと満潮になる。潮間差は1.8m。矢印したところがブリゼルブラト海の牡蠣養殖場である。
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  • 以下の写真は社長から送ってもらったもので、今の季節ではないが、このように養殖している。
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  • 向こうに第二次世界大戦時に、独軍の射撃訓練ターゲットとして使われた「海の虫SEE KAŪEC」が見える。これを取り壊すと環境破壊になるのでそのままにしておくのだという。
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  • 牡蠣の出荷は12月と新年前が多く、それと6月から9月のバカンスシーズン。ドイツ国内で80%売る。残りはイタリア、デンマーク、シンガポール、香港、ドバイ、オーストリア、スイス、スペインに出している。
  • 一階のレストランは11月から2月は半分だけ開け、レストランから作業場を見えるようにしている。牡蠣養殖はドイツではこの企業一社のみの独占であり、ドイツのブランドとして紹介されている小冊子をいただく。
  • この牡蠣養殖場を訪問して一番の特徴と感じたのは、海がとてもきれいだということ。EU連合の規定はドイツ国内規定より厳しいが、その厳しい基準でAの判定を受けている。Aを受けたのはスコットランドとアイルランドとここの3か所だけだという。つまり、出荷する前の精水による浄化がいらない海である。世界でもこのような海は珍しい。それだけにナショナルパークとして環境保護には厳しい規制が課せられているだろう。
  • いただいた水質基準判定資料とその概略訳文である。
  • (訳文)
  • 2004年4月29日、(EG)条例No.854/2004,規定II B,項1bとc)による、北フリースランド貝類生産区域に於けるモニタリング2004年4月29日、(EG)条例No.854/2004,規定II Aにより等級付け第42週
  • 1.分類
  • 微生物学的検査の結果により、牡蠣生産区域1及び貝類生産区域11MKB3,5,13,21,22,24,33,36,43ならびにIVMKB61の区域は2004年4月29日の(EG)条例No.854・2004、規定II第2章A,第3項により、生産区域Aと等級付けされました。
  • ”2004年4月29日の(EG)条例No.854・2004、規定II第2章A,第3項により、生産区域Aと等級付けされた”これを文書登録をして下さい。
  • 2.海草に含まれる毒物検査の結果・・・数値は省略
  • DSP オカダ酸、ディノフィジス毒,ペクテノ毒、アザスピラシド、イェソ毒
  • ASP ドモイン酸
  • PSP ザクシィ毒
  • *検査には海草の全体または部分を使用。
  • 追記:インターネットをご利用下さい。http//www.vet.nordfriesenland.deサイトの食料品管理のページで最新検査結果及びその他の情報が得られます。
  • (原資料)
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  • 次に感じるのは作業条件が厳しいことである。通常、牡蠣は稚貝を網で育て、大きくなったら次の網に入れて育てる。だが、この海は冬が凍ってしまうので、そのまま海には置けない。冬場に入ると作業場にトラクターで海から牡蠣を移動させ、それを長期間保管することになるが、その作業は大変だろう。
  • その証明が以下の写真である。事務所の風景が夏と冬では一変している。
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  • もう一つは、ドイツで唯一の牡蠣養殖場ということだ。これはすごい。国内にはライバルがいないということは、マーケティング上有利であり、これがドイツのブランド品として認定された理由だろうと、それを社長に伝えると、いやそうではない、選ばれたのは「養殖をしっかり・ジックリ続けてきたからだと思う」との回答である。
  • これになるほどと頷くと、加えて「世界各地で活躍しているドイツ人シェフが自社の牡蠣を指名してくれる」とも言う。確かに、最近、世界各地でドイツ人シェフの人気が出て来ており、その人達からの指名はSylter Royalの評価を高めることになるだろうと思う。
  • 取材が終り、一階のレストランで昼食を食べようと思ったが、今日は従業員が休みで開かないというので、帰りはヒンデンブルクダム築堤を通る列車に乗ろうと、ヴェスターランド駅までタクシーで戻り乗車券を買った。
  • この乗車券、各駅停車の鈍行に乗ると5人で34ユーロだという。一人当たり7ユーロ弱だ。安い。一等は一人48ユーロもする。このシステムを利用すると、全国どこでも安く行ける。但し時間はかかるが。乗車券の有効期間は21日間であるから、この期間内なら、途中宿泊しながら何回乗ってもよく、長距離旅行は安くできる。日本のJRには、このようなシステムはない。そういえばフランスにも同様のシステムがある。
  • ヴェスターランド駅レストランでの昼食、黒人ウェイターが日本人かと聞いてくる。そこであなたはどこから来たのか、と聞くと「トーゴ」との答え。西アフリカから来ているのだ。ヨーロッパは多民族の人々が一緒に生活していると改めて感じる。
  •  試しに、この各駅停車に乗ってみた。ヴェスターランド駅13時22分発。ハンブルグに16時45分着であるから3時間23分乗ったことになる。やはり各駅停車は大変だ。途中ぐっすり寝てしまった。

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