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ジャカルタのオイスターバー

  • ジャカルタの中心部に位置するPLAZA INDONESIA、そこのFoodホールに入ると、一見して商品が充実しそろっていると分かる。これは高額所得層相手の店とも感じる。照明も豊かで、日本食品が多く並んで、特に豆腐が棚をひろくとっているのが眼につく。インドネシアは大豆文化なので、醤油、味噌、納豆を受け入れる素地があるのだ。このFoodホールに買い物にくる日本人は一般的に少ないという。地元の富裕層相手なのだ。だが、ジャカルタでは今がパンブームで、岡山のパン屋と小樽のパームクーヘンが日本名で出店していて、大変美味いので、そこに買い物に来る本人はいるらしい。
  • さて、この近くで牡蠣を食べさせるところがあるか。それを現地の人と一緒に探したが、なかなか見つからない。中華料理ならあるかと行ってみたが扱っていない。そこでこのビル内のハイアットホテルに行き、ここのCレストラン入口で、ようやく生牡蠣がショーケースに入っているのを見つけた。ニュージランドとUSA産とある。USAのclamもある。
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  • しかし、ここは高いので、もう一階下のロビー階にあるGRAND CAFEに行くと、入って正面に生牡蠣がある。
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  • ウェイターに聞いてみると、ニュージランド産とのこと。このカフェはインドネシア料理、寿司、中華・西洋料理と何でもある。なかなか清潔そうだし、テーブルもきれいで、サービスもよさそうなので入った。一人当たり一定額のランチであるので、何を食べてもその範囲の金額である。同行したインドネシア人男性、牡蠣が好きだと何個も食べている。味はどうかと聞くと「美味い」の一言。こちらはインドネシアに着いたばかりなので、牡蠣は遠慮した。いずれバリ島に牡蠣があるようなので、そちらで食べたいと思うからである。

バリ島海洋養殖研究所

  • ジャカルタからバリ島に向かい、バリ島の北部に位置する海岸の「バリ島海洋養殖研究所RESEARCH INSTITUTE FOR MARICULTURE」を訪問した。バリ島は幅が95km、長さは135km。それほど大きな島ではないが、この島に人口が280万人。これは多いと感じる。したがって、車で走って周りを見渡すと、どこに行っても家がある。だが、さすがにバリ島海洋養殖研究所のある当りは、海辺で家数は少ない。研究所の敷地は617ha。デンマークと日本の援助で建設されたと言い、その内訳は80%が日本援助という。
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  • マグロなどの養殖研究が主体であるが、そのた多くの養殖についても研究している実態について、ミネラルウォーターが何本も机の上に置かれた会議室で、パワーポイントに基づき説明を受けた。とても親切である。貝の養殖している全国の分布図をコピーしてもらう。赤貝、みどり貝、真珠貝、鮑。もう一枚は9種類の貝の名前と価格、形、大きさをまとめたものだが、すべてインドネシア語であり、残念ながらよくわからない。海水温度は平均27度から29度。30度になる時もあるという。
  • また、牡蠣養殖について訪問してきた日本人は、前述の西川信良氏に続いて二人目だという補足もあったように、バリ島の牡蠣について調査している事例は少ないことがわかる。研究所内を案内受け、水槽の牡蠣を見ると巨大牡蠣である。マングローブの樹皮が着いたままの牡蠣を採ってきて、水槽で飼育しているが、この牡蠣は現地でTIRAMティラム(オイスターの意味)BAKAUバカウ(マングローブの意味)と呼ばれている。
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  • インドネシアでの牡蠣の食べ方は茹でる、焼く、蒸す。バリ島の村人はスープにする。生では食べない。刺身もサーモン程度食べるだけだという。インドネシア人はご飯にいろいろ混ぜて食べるが、その素材を海から採って来て入れる場合もあり、その際に牡蠣も入れることがある。チャンプルーであり、インドネシア料理ではナシチャンプルといい、ご飯と数種類のおかずを混ぜた料理である。ナシとはインドネシア語で飯の意である。
  • さて、牡蠣の養殖であるが、実は、2年前からトライしているが成功していないということが判明した。海岸に生育しているマングローブ林から天然牡蠣を採って、そこから養殖すべく実験を続けたが、なかなか成功しない。西川信義氏の指導を受けたが未だ成功していないのである。そこで、日本に戻って、西川氏のアドレスを調べ、日程調整を何度かトライして、ようやく西川氏に札幌でお会いでき、バリ島における牡蠣養殖の実態をお聞きした。
  • まずは、バリ島の牡蠣養殖はどうして始めたのかという背景である。これについては、2006年にバリ島の天然とこぶしが採りつくして枯渇し始めたので、とこぶしの養殖をしたところ成功した。バリ島のレストランではとこぶしがよく提供され、観光客に好評に受けつけられているとのこと。
  • とこぶしが成功したので、次に何を養殖するか検討していたところ、バリ島は海岸を埋め立てゴミの処理島をつくったが、その護岸壁に牡蠣がびっしりついていたのを見つけた。これを見て、牡蠣養殖が出来るのではと思い、さらに探していると、マングローブの根本に牡蠣が自生していることがわかった。そこでバリ島海洋養殖研究所で2009年から始めたが、成功しない。何故か明確には分からないが、推測としては、多くの魚や真珠貝等の養殖をしているので、当然に餌に抗生物質を入れている上に、海水の塩分濃度、海水の汚れ、重金属類、殺菌のための薬品使用等が重なって、眼には見えないが海が牡蠣養殖に適しないのではないかと考えている。
  • ところで、インドネシアのパプア・ニューギニア地区のBIAKビアック島に素晴らしい牡蠣が存在しているらしいとお聞きした。ビアック島は、珊瑚礁と熱帯魚で知られ、日本の淡路島の約3倍の広さであるが、インドネシアでは小さな島である。ビアック島は飛行機によって発展した島で、その飛行場の起源は太平洋戦争にさかのぼる。隆起珊瑚礁の地形による平坦地であることから、長い滑走路が得られたため日本軍は飛行場を建設した。ところがこの飛行場を最大限利用したのは連合軍である。連合軍はビアック島を戦略上の重要地点と認め、1944年5月に島に上陸し、激しい戦闘が行なわれ日本の兵士が1万人以上も戦死した。現在も戦争の残骸が見られ、日本軍のたてこもったゴア・ジュパン(日本人の洞窟)という壕もある。
  • そのビアック島の海底からは、深層水ベルトによって「湧昇流」が上昇している。海水の流れには表層の水平方向の他に、垂直方向の水の動きがあるが、この後者の下層から 上層に昇っていく流れを「湧昇流」と呼ぶ。この湧昇海域の特徴としては、下層の水、即ち深層水が昇ってくるので、この 海水に含まれる窒素や隣などの栄養物質が供給されるため肥沃な海域となる。したがって、 植物プランクトンや、これを食べる動物プランクトン、さらに魚が集まり、好漁場が形成されるため生育が早いという特性がある。とすると、ビアック島の牡蠣も生育が早いと想定されるので、一度調査に行ってみたいと思っている。しかし、ビアック島は赤道直下、すごく暑いので、訪問し調査するのをためらっている所でもある。
  • 以下がビアック島の所在を赤く○した地図である。
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